復原の記録

工事概要

工事は、建築当初の復原を目指し、あわせて必要な構造補強や活用のための新たな設備工事等を実施しました。事業は、設計監理を財団法人文化財建造物保存技術協会に委託し、山形県の事業として行いました。修理工事の概要は次のとおりです。

1、解体範囲を最小限にとどめ、極力在来の材料を使用しながら従来の工法で施行して創建当時の姿の復原を目指しました。

2、構造補強のため、旧県庁舎では、小屋裏の水平鉄骨トラスの架設やレンガ壁頂部からの鉄筋の挿入などを行ったほか、旧議事堂では議場棟の両側に鉄骨造のバットレスを設けるなどの対策を講じました。施行にあたっては、できるだけ内装に影響を与えないように配慮しました。

3、活用のために、新たに冷暖房設備、エレベーター、身障者用の便所を設置しました。

4、「正庁」、「貴賓室」、「知事室」、「内務部長室」等の天井を漆喰飾天井に復原したほか、カーテン、壁紙、シャンデリア、絨毯など、できる限り復原を目指しました。

5、床材では、日本では既に製造されていないリノリウムを使用して復原に努めました(議場など)。

6、屋根は当時と同じスレート葺きとし、時計塔の銅板葺きなどを再現しました。

7、議場では美しいヴォールト天井や正面出入り口上のバルコニーなどの意匠を復原しました。

経過

年月項目
1876(明治9).8山形・置賜・鶴岡の3県を合併し、山形県とする
1877(同10).11初代県庁舎落成
1883(同16).5初代県会議事堂落成
1911(同44).5山形市北大火(旧県庁舎及び県会議事堂焼失)
1916(大正5).62代県庁舎、県会議事堂落成
1930(昭和5).103代県会議事堂落成
1973(同48).3県庁舎跡地利用懇談会の設置(会長:副知事)
1975(同50).93代県庁舎、4代県議会議事堂開庁
1976(同51).6県庁舎跡地利用懇談会で山形県歴史資料館(仮称)の設置を決定
1978(同53).3旧県庁舎を県指定有形文化財に指定
1979(同54).6山形県歴史資料館設立委員会の設置(会長:副知事)
1980(同55).3山形県歴史資料館設立委員会で計画決定
(1)名称は山形県郷土館が望ましい
(2)展示計画として
ア.専門的・学術的なものより、子供から老人まで気軽に利用し、郷土を理解できるもの
イ.山形県の過去をみつめ、未来の山形県を描くことができるもの
ウ.実物、VTR、パネル、写真等を展示し、体験を通して興味と関心を高めるもの
1982(同57).9山形県郷土館(仮称)基本構想検討委員会の設置
1983(同58).3山形県郷土館(仮称)基本構想検討委員会が「山形県郷土館基本構想」を決定
(1)名称:山形県郷土館
(2)基本テーマ:山形の歩みを振り返り、明日の山形を考える
(3)展示計画:山形県の歩み、自然、風土、ひと、交通、産業、未来の山形
(4)機能:郷土、地域文化資料のネットワーク化、情報センター
1984(同59).12旧県庁舎及び県会議事堂が国の重要文化財に指定される
1986(同61).7旧県会議事堂の半解体調査開始
1987(同62).6山形県郷土館展示専門委員会の設置
1987(同62).8旧議事堂の現状変更許可(復原方針の決定)
1988(同63).2旧県庁舎の半解体調査開始
1990(平成2).4旧県庁舎の現状変更許可(復原方針の決定)
1990(同2).9旧県会議事堂の修理工事完成
1993(同5).9山形県郷土館(仮称)展示基本設計
1994(同6).2山形県郷土館(仮称)展示実施設計
1994(同6).6山形県郷土館展示委員会の設置
1995(同7).7山形県郷土館条例交公布
1995(同7).9公募を経て、山形県郷土館の愛称を、文化がはばたき大きく飛翔することを象徴するものというから「文翔館」と決定(同時にシンボルマークも決定)
1995(同7).10旧県庁舎及び県会議事堂修理工事、展示工事完成

記録ビデオ

  1. 文化財の修復とは 2分59秒
  2. 外装工事 3分28秒
  3. 内装工事 2分58秒
  4. 漆喰天井の復原 3分28秒
  5. 時計塔工事 2分58秒