仙人講座/第8期 (平成10年度)

第1回講座「発想仙人」  平成10年7月16日(木)「遊学館」

 今年度の初講座は開講式に引き続いて「発想仙人」をテーマに開かれました。最初に作家の澤地久枝さんが「マイナスとプラスの魔術」と題して基調講演し、この後、元山形県立博物館副館長の奥山武夫さんが「自然から学ぶこと」と題して実践講座を行いました。

基調講演

 澤地さんは「人生は受け身ではなく前向きでありたい。挫折はその人間が試されているのであり、その後、どのように生きるかによって挫折や失敗は生きも、死にもする。お金が万能の世の中という考えは捨てて、内面的に豊かな人生を持つことを大切にしたい。不幸を自分のバネともテコともして生きていこうとする意志を失わない、つまりマイナスをプラスに転化する柔軟な発想が武器です」と語っていました。

(写真:柔軟な発想を-と語る澤地さん)

実践講座

 奥山さんは「動物の生態や鳥の渡りなどは地質時代から何十万年も変わらないものとしてとらえていたが、昭和30年を境に大きく変化した。理由は有機水銀系の農薬や工場排水などが挙げられ、ムク鳥が渡りを止めて県内でも越冬するなど、増加する鳥と減少する鳥の差が大きくなっている。地球環境や動物の絶滅、種の多様性などの問題点に目を向けてもらいたい」と強調していました。

講座内容に感動し拍手でこたえる受講生
地球環境に関心を持とうと話す奥山さん

第2回講座「交遊仙人」  平成10年8月21日(金)「遊学館」

 第2回の講座は「交流の術を会得する」をテーマに開かれました。財団法人集団力学研究所副所長の三角恵美子さんが「人間関係を楽しく」と題して基調講演を行い、実践講座ではトラベル・コーディネーターの原田昇さんが「旅と人生」を主題に講演しました。

基調講演  

 三角さんは「今は変化の時代といわれ、人間関係に難を感じる人も多いが、それは自分が経験していないから理解できない、対処できないと思うからでしょう。人間関係のトラブルは『私が正しい』と主張することから起こりやすい。自己中心的な考えではなく、相手を受け入れる共通認識が人間関係を楽にする方途だと思う。いろんな考えを許容し、話せば分かる余裕を持ちたい」と話していました。

(写真:交流の術のポイントを説く三角さん)

実践講座  

 原田さんは「旅の価値は記憶量と記憶が生き続ける期間の長さだと考える。同時に感性も重要で、それを豊かにするには旅先への価値観を変えていくことです。価値観は『持つ』と『在る』とに分けられ、英国の詩人テニソンは花を手に取り観察することで宇宙を知ろうとし、芭蕉は花を見ただけで大宇宙を想像した。旅は五感で感じることが大事で目的を持ち事前に学習することも旅の価値を高める」と指摘していました。

講座の合間に軽運動でリラックスする受講生
旅と人生について語る原田さん

第3回講座「健康仙人」  平成10年9月16日(木) 「遊学館」

 第3回の講座は「健康の戦術を身につける」を主題に開かれ、スポーツ評論家の栗山英樹さんが「夢を追いかけて」と題して基調講演を行い、本誌の健康コーナーでワンポイントアドバイスを担当している山形女子短期大学助教授の秋元千鶴子さんが「いつまでも若く美しく」のテーマで実践講座をしました。

基調講演 

 栗山さんは、プロ野球選手時代までの過去を振り返りながら「小学から大学、社会人まで野球を通して節目ごと、多くの先輩に『言葉』で励まされた。大学の終盤、夢をあきらめかけている自分に気付き『やらない後悔はしない』と3年でだめなら学校の先生になる決意でプロの門をたたいた。『人と比べるな、自分を忘れるな』という二軍時代の上司の言葉で一軍に上ることが出来た。多くの人との出会いや先輩の激励に育てられたと思う。皆さんも夢を追う後輩によりよい助言を送ってほしい」と話していました。

(写真:先輩、上司の「言葉」に育てられたと語る栗山さん)

実践講座

 秋元さんは「身体の細胞は毎日、死んでいくが、新しい細胞も生まれる。運動で汗をかいたり、筋肉を刺激することはいいことで、毎日、継続することが大事です。運動は難しくはない。少しの時間を生かし繰り返すことがポイントです。歯磨きしながら膝の屈伸運動をしたり、イスに腰掛けながら肩をもんだり、叩いたり。とにかく毎日、回数を決めて続ける。それが元気の元であり、若さを保つ秘訣です」とアドバイスしてました。

笑顔もはじける仙人講座会場
若さの秘訣を助言する秋元さん

第4回講座「洒落仙人」  平成10年10月15日(木) 「遊学館」

 第4回の講座は「ゆとりから生まれるユーモア精神」をテーマに、”洒落仙人”を学びました。テレビ、ラジオで活躍のシネマキャスター西田和晃さんが「映画の中に見るお洒落」と題して基調講演した後、実践講座で小説家の高橋義夫さんが「盛り場考古学」を伝授しました。

基調講演

 西田さんは「イングリット・バーグマンの『カサブランカ』は”君の瞳に乾杯”とか、粋な翻訳も印象深く、ビビアン・リーの”風とともに去りぬ”の名画とともに人々に多くの感動を与えた。淀川長治さんは『映画は国の窓である』とし、映画で国や年代を知ることができる、と言っています。素晴らしい言葉だと思います。30歳代に見た映画を今、見ると違った感動があり、自分の再発見になります。映画はその時代をよみがえらせます。自分探しのためにも、もう一度、昔の名作を堪能して下さい」と強調していました。

(写真:自分探しのために名作を見てと語る西田さん)

実践講座  

 高橋さんは「盛り場に興味があり、自分で”盛り場考古学”として変遷の痕跡探しをしています。山形県はその宝庫です。松竹蒲田のスターだった龍田静枝(たつた・しずえ)という女優も山形市出身ですが、調べてみると実に興味深く、今は彼女の映画とかポスターなどを探しています。盛り場考古学は何でも対象になります。1人1科目といいますが、何かテーマを決めてみなさんも取り組んでみてはいかがですか。1人だと変人扱いされますが、数人で当たれば”研究”になります。何か宝を見つけて自慢しあう遊びを是非、試していただきたい」と話していました。

(写真:盛り場考古学を進める高橋さん)
 楽しい講座に笑顔をのぞかせる受講生

第6回講座「洒落仙人」  平成10年12月16日(水) 「遊学館」

 第6回講座は、好奇に目を向ける戦術を身につける-を主題に開かれ、作詞家で音楽評論家の湯川れい子さんが、米沢市で過ごした幼少時代の思い出を語りながら「感性が21世紀を創る」と題して基調講演。実践講座では「初めてのパソコン」-インターネット体験-のテーマで富士通東北システムエンジニアリングの佐藤功メディアセンター課長からパソコンの基礎を学びました。

基調講演

 湯川さんは「音楽のリズムは、私たちの身体を自然に安定性を保つ免疫作用、ホメオスタシスがあることが分かってきた。病気などの治療に音楽を取り入れることは2万年前から存在しており、近年のストレス社会でさらに注目されている。そのリズムを他動的に受け入れる、また目に見えないものを感じ取る感性で音楽を受け入れるのが望ましい。さらに同質の論理で言えば、悲しいときにより悲しい音楽を聞く、悲しいときには思いっきり泣くのが肉体の律動にかなった対応です。若い人のキーの高い、うるさいと聞こえる音楽はその若い時代のストレス解消でもあり、それを抑えるのは感性の破壊にもつながる。感性豊かな子供を育てるのが大人社会の務めでもあります」と語っていました。

実践講座

 佐藤さんは、パソコンやインターネットの意味を分かりやすく解説しながら「インターネットの利用回数は世界で1億人とも言われ、日本国内でも1千万人以上になっている。また電子メールが交信できる国も154カ国に上る。インターネットは弾道計算など軍事ネットワークとして開発されたが、その後、学術ネットワークとして分離独立、いまでは商用ネットワークとしてますます重要視されている。反面、著作権や有害情報、個人情報のプライバシー保護などの課題も残されている」と実状を話していました。

第7回講座「洒落仙人」&修了式
平成11年1月16日(水) 「遊学館」

いきいきと118人が仙人ライセンス取得!!=8期生が晴れて仙人大学校を終了=

 平成10年度の仙人大学校最終講座が1月21日、山形グランドホテルで開かれ、第8期生の受講生118人が全課程修了証書である”仙人ライセンス”を習得しました。受講生たちは「豊かな生涯学習に大きなヒントを得た」「友達が増え、交流の輪が広がった」などと感想を胸に、明日への生活エネルギーを増幅させながら半年間の仙人術会得に満足そうでした。

 仙人講座は、財団法人山形県長寿社会推進機構(國井一彦理事長)が健康でゆとりあるシニアライフの充実に向け、「仙人」を理想に発想、健康、一芸、好奇、自足、洒落、交遊の7つの顔をテーマに生きがいのヒントを習得しよう、と各界の著名講師を招き、年間7回の講座で感性を磨く教養事業です。平成3年度から続き、本年度が8期目で延べ受講生は930人に上っています。

 本年度の最終講座では、医学博士で農林中央金庫嘱託医の小山内博さんと、女優の和泉雅子さんの講演を開きました。引き続き講師を囲み受講生全員で記念撮影の後、終了式を行いました。國井一彦理事長が「学んだ知識や考えを明るい社会づくりに役立ててください」と式辞、受講生代表の松田達雄さん(80)=山形市小白川町三丁目=と高内キクエさん(79)=山形市六日町=に修了証書を手渡ししました。代表の2人は「磨いた仙人術で明るく生活します」と謝辞を述べました。鈴木一夫県健康福祉部次長の祝辞に続き、菅沼喜一県老人クラブ連合会会長の音頭で乾杯をし、テーブルを囲んで各講座を振り返りながら和やかに懇談しました。

■第7回講座

 本年度の最終講座では、医学博士で農林中央金庫嘱託医の小山内博さんと、女優の和泉雅子さんの講演を開きました。引き続き講師を囲み受講生全員で記念撮影の後、終了式を行いました。國井一彦理事長が「学んだ知識や考えを明るい社会づくりに役立ててください」と式辞、受講生代表の松田達雄さん(80)=山形市小白川町三丁目=と高内キクエさん(79)=山形市六日町=に修了証書を手渡ししました。代表の2人は「磨いた仙人術で明るく生活します」と謝辞を述べました。鈴木一夫県健康福祉部次長の祝辞に続き、菅沼喜一県老人クラブ連合会会長の音頭で乾杯をし、テーブルを囲んで各講座を振り返りながら和やかに懇談しました。

 初めに実践講座があり、小山内博さんが「元気で長生きするために」のテーマで健康維持のポイントを助言しました。特に「ストレスの8割は背中の筋肉に集中している。少し丸めた背中を叩くと強い痛みを感じる人は、脊椎過敏症で、眠りが浅く、生活に疲れやすく、ねばりのない身体になっています。人の心は、身体ににじみ出てくるものですから、身体もしっかりしていなければ余裕がなく、他人に優しい思いやりの心がにじみ出てくることはないのです。こうした悪循環を断ち切り、ねばりのある身体づくりのために休幹筋のトレーニングを勧めます。状態そらしの運動と腹筋運動です。背中の靱帯(じんたい)に栄養が入るよう屈伸から元に戻した脱力の時、二呼吸しながら50回程度繰り返すのが効果的です」などと解説書を交えながら助言していました。

 和泉さんは「笑ってよ北極点」と題し平成元年5月、スノーモービルで北極点踏破を果たした冒険のエピソードをまじえながら基調講演をしました。和泉さんは「1度目は、あと二日で目標到達の時点で気象の激変に遭い断念したが、2度目はテントや衣類を改良して挑戦した。氷点下40~50度の白銀の世界はドライアイスの中で生活しているようなもの。ストレスで思考力が鈍り、突然、震えがきて自分が分からなくなる極限状態に陥るケースもある。そのために肉や砂糖、米を大量に食べる。1日5000キロカロリーにもなる。それでも体重は7キロも減っていました。それだけ肉体的、精神的に過酷な冒険でもありました。冒険で全財産を失ったが、北極の自然から命の大切さや友情の素晴らしさなど、お金では買えないものをたくさん得た。北極点だけが全てではないが、皆さんも毎日、自分のユメ・北極点に向かって元気に走ってください」と話していました。

修了生の感想

渡辺忠助さん(65歳 山形市荒楯町2丁目)
 毎回、個性のある講座で楽しかった。老人の力の話や秋元先生の健康講座などは印象に残る。人生いろんな生き方、考え方があるけれど、この講座で目からウロコがはがれたような感動がたびたびでした。

真室トキ子さん(72歳 真室川町新町)
 79歳の夫と一緒に真室川町から車で新庄まで、そこから電車で通いました。皆勤賞もいただき嬉しく思っています。いつも楽しく、湯川れい子先生に学んだ呼吸法は大変、ためになり実行しています。

松田達夫さん(80歳 山形市小白川町3丁目)
 人生の仙人術を楽しく学ぶことができたことや、新しい交流のきっかけづくりにもなった。毎回、内容が山形新聞に掲載されるがこれを切り抜きテキストにして復習もしている。これからも続けてほしい。

鈴木儀雄さん(69歳 山形市双葉町2丁目)
「働け、働けの遊びを知らない世代でもあり、今回の講座で何か方向づけしていただいたような気がする。夢を持って生きる、と語ったピーター・フランクルさんの講座が印象的でした」

高内キクエさん(79歳 山形市六日町)
 山形新聞に載る講座の切り抜きは、私もしていました。そのことは終了レポートにも書きました。友人からの勧めで受講することになりましたが、ためになる話を友達と会合でも伝達しているんです。

小関俊雄さん・アキ子さん(65歳・64歳 上山市鶴脛町)
 都合の悪い日があり、全講座を受講することはできませんでしたが、分かりやすくて楽しい講座が多かったので、ためになりました。秋元先生の健康体操は印象深かった。