仙人講座/第9期 (平成11年度)

■第1回講座「交遊仙人」  平成11年6月24日 遊学館

 平成11年度の仙人大学校の「仙人講座」が開校しました。去る6月24日、山形市の遊学館で開校式に引き続き「交遊仙人」をテーマに初講座がスタートし、九期生122人が豊かなシニアライフ構築と仲間づくりに新たな一歩を記しました。

この講座は、本財団が健康でゆとりあるシニアライフの充実に向け、「仙人」を理想に発想、健康、一芸、好奇、自足、洒落、交遊の7項目を主題に各界の著名講師を招き、感性を磨く教養事業です。平成3年度から続き、本年度が九期目で、12月まで別表のように7回の講座が開かれます。

 開校式では学長の國井一彦本財団理事長が「講座を通じて、健康で生きがいのある社会参加のパワーをつかんでほしい」と挨拶、来賓の歌丸一夫県健康福祉部次長が祝辞を述べました。
 引き続き第一回講座が行われ、漫才のB&Bで活躍したタレントの島田洋七さんが「心の笑い」―明るい老後の過ごし方―と題して基調講演。ヨガ研究家・インストラクターの末永順子さんが「ヨガの魅力」をテーマに実践講座を行いました。

基調講演

 島田さんは、広島市で誕生後、小学2年から中学まで祖母と2人で暮らした佐賀市での生活をユーモアを交えて紹介しながら「人生くよくよする必要はない。見ざる、聞かざる、言わざる、を見たる、聞いたる、言たる、の逆転の発想で活発に行動しよう。他人に少々嫌われても世間を気にせず気ままに生きよう。常に、何か変わったことをするぐらいの気概が必要だ。平々凡々はボケを早める。十二単でも着て歩こうか。笑いを人生の軸に生活することが長生きできるこつです」と強調していました。

(写真:ユーモアたっぷりに明るい老後について話す島田さん)

実践講座

 末永さんは、師匠であるインド人 のジバン先生にもお手伝いしてもらいながら視力や記憶力の回復、さらにボケ防止にも役立つという片鼻呼吸法を伝授。「ヨガは心がエンジン、身体が車輪という考えで、両方のバランスが取れて、上手にコントロールすることによって身体機能を活性化する運動です。深呼吸する時、肩や胸でするのは間違いで、お腹のおヘソを中心にするのが正解です。瞑想を長時間出来るようになると、心が満たされ、とても良い気持ちになります。人間の肺は普通400ccしか使っていませんが、ヨガの深呼吸法では10倍に拡大します。ぜひ、呼吸法をマスターして若々しい、積極的な生活を心掛けてください」と話していました。

(写真:ジバン先生-左-と一緒にヨガを指導する末永さん)

■第2回講座「交遊仙人」  平成11年7月22日 遊学館

 第二回講座は「健康の仙術を身につける」をテーマに開かれました。基調講演は放送ジャーナリストで「榎さんのお早うさん」のラジオ番組でお馴染みの榎本勝起さん。「女と男は合わせ鏡」と題し、軽妙な語り口で会場の笑いを誘いながら「人生はたった一度の現品限り」と力説しました。実践講座ではキリンビールの東北支社山形営業部長の伊藤一徳さんが「お酒と健康」のタイトルで、ビールのおいしい飲み方や味わい方をビデオを使いながら指導しました。

基調講演

 元TBSのアナウンス部長を務めた榎本さんは、「かすかな驚きを見せる人はすべて魅力的である」というイギリスの作家オスカー・ワイルドの言葉を引用しながら、 「人生はかきくけこ(感激し、興味を持ち、工夫し、経験し、恋心を持つこと)が大事」と強調し、「人生を前向きに燃焼するための第一歩は、姿勢を正すことから始めよう」と呼びかけました。講演の締めくくりとして師匠の徳川夢声が病床で妻に言い残した「おれ達いい夫婦だったなア」という今際の言葉を紹介して講演を終えました。受講者からは思わず「お陰様で脳みそが満腹になりました」と感謝の声が寄せられました。

(写真:全国の講演会でひっぱりだこの榎本さん)

実践講座

 伊藤さんは、ビールの歴史や定義および製造工程をビデオで紹介した後、おいしいビールの飲み方は(1)新鮮なうちに飲む②暗くて涼しい所に保管する(2)冷やし過ぎない(3)きれいなグラスを使うことを勧めました。また適量の飲酒はストレスを発散させる効果があるため、昔から酒は百薬の長といわれているが、決して他人に無理強いさせてはいけないと飲酒マナーの徹底を呼びかけました。次いで高齢者が上手にお酒とつき合うためには▽これまでと同じ調子で飲まない▽昼間から飲まない▽一人で飲まない▽薬と一緒に飲まない▽肝臓などの定期検査を受けること――などを指摘しました。

(写真:いい仕事をした後のビールは格別と伊藤さん)

■第3回講座「自足仙人」  平成11年8月25日 遊学館

 第三回講座は「自主自立の仙術を身につける」を主題に開かれました。基調講演ではエベレストをはじめ、女性で世界初の七大陸の最高峰を登頂した登山家の田部井淳子さんが「山歩き」と題して、実体験に基づいた処世術を展開したほか、実践講座では山形警察署の生活安全課長の佐藤孝男さんが「お年寄りが安全な生活をおくるために」と題して、訪問販売や催眠商法などの悪質商法に対する心構えを伝授しました。

基調講演

 キルギスの最高峰ポベーダ山の登頂に成功し、四日前に帰国したばかりという田部井さんは、猛吹雪のため凍傷を負ったという疲れも見せず、真っ黒に日焼けした元気な顔で登壇しました。「登山はすべて自分の責任のもとに完結する。たとえ頂上に登れなくとも無理をしないという謙虚さと、判断能力を養うことが大事」と強調しました。また「これからの人生は限られた時間しかない。悔いのないよう、自分だけの歴史を作るため、やりたいことを思い切って実行したい」そのため「どんな国にも最高峰はある。残りの人生は百八十数ヵ国の最高峰の登頂にチャレンジしたい」と新たな目標と強い決意を披露し、場内の共感をよびました。

(写真:小さな身体が大きく見えた田部井さん)

実践講座

 佐藤さんは、警察の仕事と山形県の治安情勢を一通り説明した後、身の回りの安全に触れ、「自分の安全は自分で守るという意識が重要で、その手助けとして警察がある」と見解を述べました。催眠商法や霊感商法、健康商法、かたり商法、送り付け商法、先物取引などの具体的な事例を取り上げ、これらの悪質商法から身を守るためには、はっきりと断る勇気を持つことが大事とした上で、身分証明の提示を求めるとともにメモをとる。それでも居座る場合は110番に電話するなどの対処法のほか、クーリング・オフ制度をわかりやすく解説して好評を得ました。

(写真:警察になんでも相談くださいと訴える佐藤さん)

■第4回講座「発想仙人」  平成11年9月22日 遊学館

 「発想の仙術」がテーマで、ボイストレーナーの森功さんが「実践講座」を担当、作曲家の小林亜星さんが「基調講演」を行いました。仙人講座の修了生で組織する「仙遊会」のメンバーも大勢聴講し、会場は満席で熱気にあふれていました。

基調講演  

 森さんは「声の元気は発想の元」と題し「人の一生は声に左右されます。声の元気な人は活力旺盛です。むやみに出すのではなく長く吐き出す呼吸法が大切。カラオケは大量に酸素を体内に取り入れ、脳や細胞を活性化する効果があり、健康長寿に適した健康法です。鼻に響かせるように出すと細胞が活性化します。カラオケは楽しみながらできる健康スポーツです」と強調していました。

(写真:カラオケ健康法を勧める森さん)

実践講座

 小林さんは「ロマンチックをもう一度」として、音楽の持つロマンを往時の蓄音機を回して「心」の大切さを訴えていました。特に「言葉はメロディーを生む。古賀正男先生から『作曲家の最大の喜びは何かね』と聞かれて答えに窮したが、古賀先生は『最大の喜びは詞を頂いた時で、詞が主人でメロディーが妻』とも言っていた。そんなわけか、最近の歌には感動が少ない。昔は詞的なロマンが映画音楽にも数多くあった。それがいまはどうだろう。今日の日本人はロマンの心をなくしているように思える」と指摘。「小さな喫茶店」「湖畔の宿」「蘇州夜曲」「センチメンタルジャニー」など和洋のSPレコードを聞かせ、ロマンの心を忘れないで、と語りかけていました。

(写真:ロマンをなくさないでと話す小林さん)

■第5回講座「一芸仙人」  平成11年10月22日 遊学館

 「一芸に抜ける仙術を身につける」をテーマに、元NHKアナウンサーの山川静夫さんが「歌舞伎と私」と題して基調講演を行いました。続いて、FM仙台のラジオ番組でパーソナリティーをしている渡辺祥子さんが「暮らしの中に語りを」のタイトルで朗読を交えて、語りの喜びを伝えました。

基調講演

 国学院大学で家業(神職)を継ぐ勉強をしたものの、その道をそれてしまった、という山川さん。「学生時代に歌舞伎にとりこになり、中村勘三郎らの声色で民放ラジオのものまねコンクールに出て賞金稼ぎをした。それで舞台度胸がつき、本番の一発勝負に強くなった。同時に、自分自身に広がりも出来た。人生は単線運転ではなく複線でいきたい。良いものか悪いものかを見分ける、それを分かった人、の境地で生きたい」と結んでいました。

(写真:人生は複線で…と個性ある生き方を強調する山川さん)

実践講座

 渡辺さんは、高畠町出身で日本のアンデルセンと知られる童話作家・浜田広介氏を讃えて制定された第二回ひろすけ童話賞に輝いた安房直子さんの「花マメの煮えるまで」の童話を、フルート奏者水野二郎さん(鶴岡市)の演奏を交えながら朗読。その合間に「日々、語りは大切です。皆さんも自分の歩んで来られた人生などを周囲の方の語り、伝えてみてください」と助言していました。

(写真:暮らしの中の語りを大事にと助言する渡辺さん)

■第6回講座「好奇仙人」  平成11年11月17日 遊学館

 「好奇に目を向ける仙術を身につける」を主題に開かれ、東武動物園園長の西山登志雄さんが基調講演を、殖産銀行営業統括部ファイナンシャルプランナーの猪倉淳さんが実践講座を行いました。

基調講演

 昭和四年生まれで、古希を迎えたという西山さんは「ボクの先生はカバだった」と題して講演。「人間も関西弁でいうボケることに無関心でいられないが、この痴呆(ちほう)症状は野性動物にも見られます。動物は命懸けでケンカする一方で、負けの信号を出したらすぐ止める。その信号とは、力を抜くことなんです。寒空の夜、猿は集団をつくり身体を寄せ合って寒さと闘う。真ん中にいたものが次は外に。一晩中、それを繰り返す。知恵というより、心でやっている。人間はそれをやらないからダメなんだ」と、動物との関わりで得た教訓や生き方を説いていました。

(写真:動物を通して人生を語る西山さん)

実践講座

 猪倉さんは「賢いお金の使い方」のテーマで「ゆとりある豊かな生活は心と経済の両輪がないといけない。そこで自宅を有効に生かす(使う)考え方で(1)自宅の現金化(2)自宅の賃貸化(3)自宅の年金化、を考えてみよう」と、居宅、宅地の居住用資産を担保に年金型の融資を受けたりできる不動産資産転換プランのリバースモケージなどについてアドバイスしていました。

(写真:賢いお金の使い方を話す猪倉さん)

■第7回講座「洒落仙人」  平成11年12月15日 遊学館

はつらつと118人が“免許皆伝” 第九期仙人大学校講座を終了

 第9期の受講生118人が「仙人ライセンス証書」を手にしました。これで第一期生からの修了生は1,051と千人台に到達、文字通りのセンニン講座となり、晴れて終了生OBで組織する「仙遊会」メンバーの仲間入りを果たした九期生は、学習成果を糧に明るい高齢化社会づくりに決意を新たにしていました。)

 修了式は12月15日、山形市のホテルキャッスルで7回目の最終講座修了後に行われました。仙人大学校副学長でもある松木賢弥本財団常務理事から受講生代表の川井岩蔵さん・美枝さん夫妻に証書が授与され、二人が謝辞を述べました。来賓の歌丸一夫県健康福祉部次長の祝辞などに続いて懇親会に移り、皆勤賞者への記念品贈呈、講師に頂いた色紙の抽選会、歌の合唱などで楽しい一時を過ごしました。
 最終講座では、落語家の三遊亭金馬師匠が「笑いの人生」と題して講演。小咄を織りまぜながら「落語家は『死』も笑いにするが、笑いはどこでも転がっている。けれども、忘れている人が多い。結局、ものの考え方であり、人生を楽しく生きることも気持ち次第です。笑いに直ぐ反応できるような、そんな人生を楽しみたい」と強調していました。

(写真:松木副学長–左–から仙人ライセンスを受ける川井さん夫妻
(写真:笑いの人生を語る金馬師匠)

修了生の感想

川井岩蔵さん(74)・美枝さん(70)=酒田市若浜町=
 「山形新聞を見て応募しました。切り抜きが趣味で以前のはスクラップして読み返して生活の糧にしている。毎回、車で通ったがいつも楽しい講座で、日々の生活の元気をいただきました」

粟野金三郎さん(67)=山形市鳥居ケ丘=
 「友人に講座を話を聞いて応募しました。皆勤賞も頂戴しましたが、前向きな話やプラス指向の考え方などが身につき、大いに参考になりました。当面はスーパーオールド(80歳)到達を目指したい」

菊地三枝子さん(67)=山形市青田=
 「勤めも終え、何かしなくっちゃ、と山新見て応募しました。幹事の役もしましたが、毎回の講座に変化があり、楽しかった。何より若返った感じがする。友人も増えたし、今後はボランティア活動もしてみたい」 毎回、個性のある講座で楽しかった。老人の力の話や秋元先生の健康講座などは印象に残る。人生いろんな生き方、考え方があるけれど、この講座で目からウロコがはがれたような感動がたびたびでした。