仙人講座/第11期 (平成13年度)

第1回講座  平成13年7月24日 遊学館

 第11回目を迎える、平成13年度「仙人大学校」の開校式が去る7月24日、山形市の遊学館で行われました。
 「仙人大学校」は、高齢者一人ひとりが、健康で生きがいを持ち、仲間と楽しくシニアライフを送られるようサポートするもので、今後毎月一回、来年1月まで合計7回行われます。
 今回の参加者は、県内各地から126名(内男61名、女65名)で、最高年齢者は87歳の方です。
 今号では、第一回の講座内容を紹介します。次号でも順次紹介しますので「すてきな仙人」を目指してはいかがでしょうか。

基調講演
「目利きの人生談義」 
古美術商・エッセイスト 中島誠之助 氏

  テレビ出演と同じように和服に羽織姿で登場した中島さんは、開口一番「現代はひと昔前と違って60、70歳はまだまだ現役です。長寿社会をどう生きるかというよりは自分の人生はどうあるべきかを考える、いつ何があるかよりも生きていることがまず大切です」と同世代の学生にエールを送り、テレビに出演中の「開運!なんでも鑑定団」を中心にした人生談義を披露されました。

 中島さんは大学を卒業後、家業の古美術の道を歩んでいて“いかにいいものを世の中に広めるか”夢中で仕事を続けていたところ、ある日突然、テレビ出演の声が掛かった。それも「骨董」をやるのだという。番組制作会社の若い人たちが“骨董通り”(東京青山、中島さんが命名)で夢中で考え、ふと骨董って?と思いついたに違いない。バブルが弾けて世の中は成熟社会を迎え、もしかしたら本物の良さを求める“潮の流れ”ではないかと感じ、若い人たちの熱意にもほだされて引き受けることに。骨董の世界は新たな生産のない、過去に作られたものを売っているどちらかといえば「後ろ向き」の世界。番組では、司会者の島田紳助がお金の面から追求すれば、石坂浩二は感性面から物の本質に迫ろうとするなど、両面がほどよく調和してすごくいい番組になっており、そうした人材も得て既に8年の長寿番組になっていると、骨董品の鑑定までのプロセスなどを紹介されました。

 「鑑定は基本がしっかりしていれば、品物を見なくともそれが本物か偽物か分かる。最後に見るのはキズがどうかぐらいで、後は番組を面白くするために、いろいろと取り混ぜているんです」。ではなぜ分かるのかといえば、それは第一に探究心で、それを夢中になって修業してきたことが今日をつくっていると。
 
 “捨て目”という言葉があるが、骨董の世界ではこの捨て目が利かないとものにならない大事なもの。例えば砂漠の中から小さな砂金を選ぶようなもので、捨て目が利かないと選べない。歌舞伎でも「捨て耳」ということを教えられ、映画の世界でも岸恵子さんとの対談の折り「捨てカット」という言葉のあることを聞いたという。それは何度も駄目を押しながらようやく辿り着く心のゆとりのようなもので「捨てるということは物を捨てるのではなく、人間にとってゆとりをもつこと、常に物を取り込める余白でしょう。これが大事なんです。修業中にこの捨て目を学んだのです」「基本は国宝とか名品といわれるものを一生懸命見て勉強し、それを吸収しながら自分の好きな物を見る。そうすると物にまつわるいろいろな背景とか歴史が見えて来るんです」また「美の心はまずもって感動です。それを土台に知識や学問の伝導力が立ち上がって初めて本物が見えてくる。現代はマニュアル化されて知識があって、そこから物を見るから本当の姿が見えない。感動が最初にないと本物を見る目が失われる。熟年世代は、こうした本物を見る目を長年の経験で培っているので、若い世代には負けません」。

 テレビで「いい仕事してますね」と言い続けて7年。いい仕事とは単に技術だけでなく人にマネの出来ないものを持っていること。物の本質は金では買えないもの。「いい物、いい仕事との出合いはどこにでもあります。しかし、それが見えないのです。見えないからまた面白い。いい仕事を見つけよう見つけようとして人生を過ごしていくのも意義のある生き方だと思いますね」テレビの裏話や多彩で幅広い交友を通して培った豊富な話題や博学ぶりに、感心しきりの顔顔顔でした。

実践講座
「元気に生きる為に」

 ことし4月から従来の山形女子短期大学が男女共学の山形短期大学に変更、41名の男子が新たに入学しました。秋元先生はこの短大で一般体育学を教えています。平成4年に山形県で開催された“べにばな国体”では陸上100m障害に選手として出場しました。「もちろん目標は優勝でしたが、32歳という年齢に加え足がぼろぼろの状態で、それでも山形県民の熱い声援を受けて頑張ってゴールしたら、私より早い選手が4人もいて五着に終わりました。それまでは陸上一筋に32年間、日本のトップ選手として活躍してたんですよ。もともとは青森県出身ですが、いまではすっかり山形弁の上手な山形県人になっています」とユーモアたっぷりに自己紹介。簡単で“いつでも、どこでも、ただでできる運動”を考えてきましたと、早速実践に入りました。

 私たちの体は、筋肉、骨、内臓、皮膚、毛髪、脳などなどすべてが細胞から成り立っていますが、何十億という単位の細胞は使わないでいると少しずつ減少していく。そして、細胞の残高によって元気の度合いが違う。筋肉の細胞が元気だと体全体が元気になる。それは体を支えるのは筋肉だからであり、筋肉が衰えると思うように自分をコントロールできなくなると説明、毎日運動をすることで筋肉細胞の減少を食い止め、活性化につなげることが可能であると、分かりやすく解説されました。さらに、頭を使うということは勉強とか何かを考えることばかりではなく、手と足の運動によって刺激されるので、手指の繰り返しの運動は脳の活性化にとても有効。

山形短期大学助教授
秋元千鶴子 氏

 ここで「グー、チョキ、パー運動」の実践。次は「指の運動」。親指とそれぞれの指を付けたり離したりしてリズミカルに動かす。次に「手首を回す運動」、「肩たたき運動」も。通常、肩を叩くときは小さくちょこちょこ叩くのが常識ですが、ここでは“運動”ということを考えて大きく強く叩きます。また椅子に腰を掛けたまま足を屈伸する「足上げ運動」かかとを上げ下げする「かかと運動」など、指先から足の先まで順次一日十回程度をめどに毎日続けることが大切。 「これを続けることで体の細胞を元気づけることができます。元気に生きるため日常生活を変えてみましょう」と結ばれました。

第2回講座  平成13年8月17日 遊学館

基調講演
「地球に学ぶ・遊ぶ・やすらぐ」 ~出会う人、自然が教えてくれたこと~
国際ラリースト エッセイスト 山村レイコさん

 基調講演は国際ラリーストでエッセイストの山村レイコさん。バイクで20日間も砂漠を駆け巡る過酷なパリ・ダカールはじめ、これまでいろんな国のラリーや旅を重ねられ、その体験を基に「地球に学ぶ・遊ぶ・やすらぐ」―出会う人、自然が教えてくれたこと―と題してお話されました。

 19歳でラリーを知り、29歳で初めてラリーに参加、いろいろ経験を積んでの念願のパリ・ダカールを完走したのは39歳のときだったといいます。「ラリーにはアクシデントがつきもので、死と直面している。そこをどう乗り越えてゴールに辿り着くかが問われるスポーツだ。初めてのころはがむしゃらに止まることを知らずリタイアすることもあったが、最近では自然体で楽しみながら走ることができ、これが完走につながっている。何度も挑戦して砂漠(自然)に教えられたものでしょう。いつまでも“前向きに生きる”ことを考えていきたい」と結ばれました。

実践講座
「旅をする人、迎える人」  
JR東日本山形支店副支店長 菅野 芳夫さん

 仙人体操の後の実践講座では、JR東日本山形支店副支店長の菅野芳夫さんが「旅をする人、迎える人」と題して、最近の旅行の実態から旅行業者の各種サービスまで幅広く紹介されました。旅行業者の各種サービスをうまく利用することで“安くてサービスの行き届いた旅行”ができるということです。事前調査の必要性をアドバイスされました。

第3回講座  平成13年9月19日 遊学館

基調講演
「複眼の心」~視点を変えると見えてくる~
 作曲家 池辺晋一郎さん

 「敬老の日」に58歳を迎えられた作曲家の池辺晋一郎さんは、オペラ作曲や付帯音楽の作曲を中心に幅広い活動で知られています。今回は「複眼の心」~視点を変えると見えてくる~と題して基調講演をいただきました。

 池辺さんは講演の中で、1982年愛媛県松山市の知的障害児たちが作った詩集と出合い感動、そのみずみずしい感性を基に児童合唱曲「どろんこの歌」を作曲、その年の芸術祭賞を受賞されましたが、これまでやってきたコンサート用の純音楽も付帯音楽も両方が大切だということを確信されたという。音楽はいいホールで演奏したり聴きたいもの。しかし、野原でもいい音楽はいい。この相反する状態をいまでは両面から考えられるようになったといいます。その基になったのが詩集との出合いで、知的なIQに対し感性のEQと人間にはいろんな面がある。ある程度年を取ったら、複眼の心で物を見ると豊かに生きられると結ばれました。

実践講座
「食文化と健康」~21世紀食のキーワード~

 仙人体操の後の実践講座では食文化料理研究家の古田久子さんが「食文化と健康」~21世紀食のキーワード~と題して、郷土料理の素晴らしさを紹介。21世紀は活性酸素を体内からどう取り除くか、そのためには郷土で生育された紅花ほか、緑黄色野菜、大豆類など体にいいといわれる食材を利用したい。キーワードは“簡健良絆”時代とアドバイス。

(写真:食文化料理研究家の古田久子さん)

第4回講座  9月19日(水) 遊学館

実践講座
「脳を使った健やかな老年期」

 第4回講座は、第13回全国生涯教育学習フェスティバル「まなびピア山形2001」参加事業として公開講座が行われました。講演に先立って、県長寿社会推進機構の佐藤常務理事が「21世紀は高齢者の世紀、高齢者が健康で生き甲斐のある社会づくりのためにお手伝いしたい」とあいさつ。講演では、山形大学医学部嘉山孝正教授が「脳を使った健やかな老年期」と題して、脳卒中予防のための分かりやすいお話をいただきました。同教授は「日本人の要介護者の50%は脳卒中による後遺症です。脳卒中にならないための予防とともに、最近では?脳ドック?の普及も目ざましく、これらを積極的に活用して予防に役立てていただきたい」と、アドバイスがありました。

山形大学医学部 嘉山孝正教授

基調講演
「私のターニングポイント」~私の生涯教育~
歌手・タレント・教育学博士 アグネス・チャンさん

 続いて歌手でタレントで教育学博士のアグネス・チャンさんが「私のターニングポイント」―私の生涯教育―と題して、自らの半生を振り返りながら、人との出会いによって成長してきた自分を見つめ、これからもいろんな人、自然から学んでいきたい―と、歌手としてタレントとして勉強にボランティアに励み、多くの感動を得るために生涯学んでいきたいと、結ばれました。アグネスさんは、香港に生まれ育って17歳で来日、「ひなげしの花」で日本レコード大賞音楽新人賞を受賞、カナダや米国の大学留学を経て、現在もボランティア活動、文化活動など国際的に活躍されています。

第5回講座  平成13年11月30日(火) 遊学館

基調講演
「健康万歳!時には翼を休めて」
フリーアナウンサー・タレント 押坂  忍さん

 第5回仙人講座の基調講演は、フリーアナウンサーでタレントの押坂忍さん。放送界の加山雄三・そして“張りのあるバリトン”の声で広く人気を集めています。今回は「健康万歳!時には翼を休めて」と題して、健康とともに特に家庭の中での“夫の自立”を促しました。
 
 押坂さんは昭和33年、苦学の末に大学を卒業しながら、結核のため一年間闘病生活を送った経験を持っています。最愛の奥様が6年前に世界に7例しかないという呼吸器系の病気で入院。闘病のかいあって一年で退院されましたが、再発などもあって今も月2回の通院生活です。奥様が家にいないと火が消えたよう。男性は家庭内で自立できていないと生活能力はゼロ。仲むつまじい夫婦ほど一心同体などといわれるが、ある程度の年齢になれば「二身分体」とか鳥居のように二本の柱で笠木(家庭)を支える関係、つまりそれぞれが自立しなければならないことを教えられたと結ばれました。

(写真:押坂忍さん)

実践講座
「温泉の効用と利用の仕方」
山形県温泉療法研究会 片桐  進さん

 仙人体操の後の実践講座では山形県温泉療法研究会の片桐進さんが「温泉の効用と利用の仕方」と題して、スライドを使って解説しました。山形県には360カ所で温泉が涌き、44市町村すべてに温泉が散在しています。古くから湯治として利用されていますが、温泉は一口で言うと「体の動きを正常に戻す」特徴を持っているという。温泉を利用するときは、一日5回以上入らないようにするとともに、体をよく洗って掛け湯をたっぷり使い浴槽に入ること、入浴前後にコップ一杯の水分をとるなどが大切。温泉は心と体を癒してくれる最高の施設、自然の恵みを十分味わって温泉を利用したい。

(写真:片桐進さん)

第6回講座  平成13年12月19日(水) 遊学館

基調講演
「上手なおつきあいのすすめ」
財団法人「集団力学研究所」副所長 三角 恵美子さん

 第6回仙人講座の基調講演は、九州・福岡市にある財団法人「集団力学研究所」副所長の三角恵美子さん。人間関係を学問的に研究し実践活動を行っている一方で、三角さんは生涯学習ボランティア指導者コースを取得されたり、生涯学習2級インストラクター、リーダーシップPM指導士、ホームヘルパー2級などの資格を持つ努力家で、講演では「上手なおつきあいのすすめ」と題して、体験に基づいた豊富な事例を紹介しながら、“上手にお付き合いするには聞き上手になりましょう”とアドバイスされました。

 現代社会は自己中心の自尊要求の強い時代だから、人間関係が非常に難しい時代になっている。日本が経済的に豊かになって間もないころの「物欲」から、欲求の方向は人間関係の「仲間意識」へと変化し、さらに「自己中心の主張」へとエスカレートしているからであり、世代間のギャップにもつながっている。人と上手におつきあいするには、まず人の話をじっくり聞く、そして相づちを打ちながら理解し、それから自分の話を聞いてもらうなどが大切です。と結ばれました。

実践講座
「薬草の話」
山形県薬用植物園 鈴木 甲子郎さん

 仙人体操の後の実践講座では、山形県薬用植物園の鈴木甲子郎さんが「薬草の話」と題してスライドを使って解説しました。寒河江市にある薬用植物園には民間薬草から薬木、水性薬草、有毒草、ハーブなど薬効別に約800種類が植えられており、年間4、000人程度の人が薬草園を訪れるという。講演では主な薬草の効能を各種類ごとに解説し、自然から薬草を採取するときの採取の仕方、その薬草の利用の仕方についてスライドを用いながら詳しく解説されました。

第7回講座&修了式
平成14年1月23日(水) 山形グランドホテル

基調講演
「マエタケのおもしろ生涯青春続行中!」
放送作家 前田 武彦さん

 平成13年度最後の「第7回仙人講座」は、放送作家・前田武彦氏の基調講演。昭和4年東京生まれで鎌倉アカデミア演劇科卒業の前田さんは、同28年にNHKテレビ「こどもの時間」をスタートにテレビ脚本を執筆、その後、民放各社のテレビ・ラジオに出演するなど“マエタケ”で親しまれています。今回は「マエタケのおもしろ生涯青春続行中!」と題してお話をいただきました。

 いま“はまっている”のがパソコンだという前田さんは、特に小学校の同級生グループでつくるEメール仲間とのやりとりで退屈しないという。遠く離れた仲間の動向が指先一つで知ることができる。しかもデジカメを使うといま現在の状況が写真で見ることもできる。やはり、高齢者といえどもパソコンを通してIT時代を享受したい。最近では、このEメールに江戸川乱歩ならぬ玉川散歩作「連続推理小説・怪人21面相」という小説を前田さんが発表し続けているという。本物の明智小五郎と少年探偵団をもじって、空地小五郎と老年探偵団が怪人21面相を追跡するのだそうです。いま仲間うちに毎日そのメールを送り続け、例えば前田さんが講演で山形へ来ると山形新幹線での模様や駅の状況などもメールに折り込んで、リアルとフィクションに仕上げて面白く出来るという。

 このように頭を使って物事を創造するとか感性を磨くことによって、痴呆(ボケ)を予防することもできるのではないか。また、自分で自分の身の回りのことができて人の世話にならなくともいい、つまり自立や自足も大切で、七つの顔「交遊」「発想」「健康」「好奇」「一芸」「自足」「洒落」をもつ素敵な高齢者を目指すこの仙人大学校は、まさに高齢者の理想像といえるでしょう。

修了式

 第七回仙人講座後に行われた修了式では、仙人大学校國井一彦学長が「去年7月から“交遊”“洒落”“自足”“健康”“発想”“好奇”“一芸”のそれぞれ七つの顔をもつ仙人、つまり個性豊かな高齢者像を目指して講座を開いてきましたが、118名の方々がめでたくそのライセンスを取得されました。ここで学んだことを今後の暮らしに生かすとともに、地域や職場にも広げていただきたい」とメッセージを寄せ、修了生代表の渡辺信夫さん(84)に副学長でもある佐藤忠樹財団常務理事から証書が手渡されました。

 これに対し渡辺さんは「毎回、講師の先生の貴重なお話を聞いて感動しました。こうした得難い体験を自分一人のものにしないで、多くの人たちに広げていきたい」と謝辞を述べられました。この後、本間県健康福祉部長のメッセージの披露、菅沼県老人クラブ連合会会長の祝辞などがあり、終了後11期生親睦会による懇親会に移りました。

 皆勤賞者への記念品贈呈、講師にいただいた色紙の抽選会、修了生による歌の合唱などもあって、楽しいひとときを過ごしました。

参加者全員で合唱