仙人講座/第14期 (平成16年度)

■第1回講座  平成16年7月30日 遊学館

基調講演
「この素晴しい国、日本・・・でも?」
桜美林大学副学長 諸星 裕氏

 基調講演は豊かな国際経験を活かした鋭い社会評論等でテレビ番組コメンテーターとしても活躍されている言語学の権威、諸星裕氏(桜美林大学副学長)。

 『この素晴らしい国、日本…でも?』と題して、世の中の動きを感じ取る独自の法則や、ミネソタ大学秋田校・初代学長として東北に赴任した当時のいろいろな逸話を披露しつつ、「差別のない社会こそが、真の国際化への扉を開く唯一の鍵である」とお話しくださいました。その具体例として、地元ビアホールのアルバイト募集に応募した外国人学生の中から金髪の女子学生だけを採用し、他の黒髪や赤毛の学生を採用しないことに対し「人種差別はやめてください」とホテル支配人に抗議されたお話や、秋田では初めてとなる欧米流の大規模に催されたレセプションパーティにおける「正装(タキシード、イブニングドレス)かつ、ご夫妻でお出で下さい。」という招待状へ右往左往する招待客のみなさんの様々な対応がおかしく、会場は大きな笑いに包まれました。

 「日本人の正装はタキシードでもモーニングでもありません。着物の紋付き袴、これこそが日本における伝統的な正装です。見たところ、まだ、みなさんは仙人にはなっておられませんね。(笑)」という軽妙な結びで素晴らしいご講演をいただきました。

実践講座
「どこでも、だれでもできる健康エクササイズ」 
やはぎ接骨院院長 矢萩 裕氏

 つづいての実践講座は、アスレチックトレーナーとしてもご活躍中のやはぎ接骨医院・矢萩裕氏。モンテディオ山形、パイオニア・レッドウィングス専属トレーナーとしても活躍されました。『どこでも、だれでもできる健康エクササイズ』と題して、スポーツ選手のケガによる故障から試合に復帰するまでのリハビリテーションの紹介や米国での研修について、あるいは栄養補助食品についてのお話をいただきました。
 この日、2階ホールの会場には歴代の仙人講座・修了生も一緒に受講。盛況の第1回仙人講座となりました。

■第2回講座  平成16年8月19日(木) 遊学館

基調講演
「元気になるために-自分にかける魔法」
芸能リポーター 東海林 のり子さん

『元気になるために 自分にかける魔法』と題した東海林のり子氏の基調講演は元気一杯、パワーあふれる内容でした。
 ご自身のこれまでのアナウンサー、レポーターとしての経験談、夫婦の在り方等、身近な例を具体的に指し示し出席者を引きつける話術の妙に魅せられながら、あっという間に講演終了。

 何でもポジティブに、肯定的に、頼まれた仕事は絶対に断らず、口元を少しあげて、微笑みながら、ありがとうございます。と謙虚にいつも感謝しながら仕事に臨まれる姿勢に感銘させられました。
 東海林さん曰く、レポーターはいつも元気な姿でいることを要求される職業だそうです。
 また、ご夫婦としての生き方には、私たちにも思い当たることがたくさんあり受講者のみなさんも共鳴し頷いている方々が大勢いらっしゃいました。

 最後におなじみの「以上、現場から東海林がお送りいたしました。」と締めくくられ、参加者から大きな拍手を浴びながら颯爽と会場を後にされました。

実践講座
「生涯学習と里仁館~学びは楽し若くなる~」 
生涯学習施設「里仁館」館長 植松 芳平氏

 づいての実践講座は『生涯学習と里仁館・学びは楽し若くなる・』と題した生涯学習施設「里仁館」館長・植松芳平氏からのお話。
 父と母の背中を見ながら育ったと語られる植松さんは家業の印刷業を引き合いにだされ、お兄さんとともに年賀状の集金を頼まれ、集金した中から小遣い分を充当するように言われるも、自分は口下手の苦手なことで、殆どをお兄さんから都合してもらっていたと子どもの頃を振り返られます。

 また、虫が好きでショウジョウバエも決して追い払ったりされなかったそうです。好きなことに早く出会えるのは幸せなことと言われます。大学時代には失明の危機も体験されました。家族や友だちの絆を再認識させられた後に、卒業後は教育者の道を選び、子どもたちに無理強いをせず、それぞれが自分なりに工夫する心の大切さを伝えようと一生懸命教壇から語りかけたと言われました。
 現在は「里仁館」で、生涯学習の輪の広がりを受講生と共に喜ぶこと、人とのふれあいに生きがいを見出していると結ばれました。

■第3回講座  平成16年9月16日(木) 遊学館

基調講演
「人間再発見」作家 藤本 義一氏

 月に1度は講演で全国各地を訪れておられる関西文壇の雄・直木賞作家、藤本義一氏による講演は、『人間再発見』と題し、独自の視線で、私たちを取り巻く現代社会で人として生きる様々な在り方をわかりやすく紐解いてくれました。

 藤本さんは自分の中に眠っている意識を覚醒することで、人としての生き方、考え方によって人生の諸問題を解決していけるようになって欲しいと言われます。
 人間は左脳型「表現するために機能する」、右脳型「創造性を発揮する」等の人の話に続いて、三種類の言葉、事実、虚構、嘘の功罪を具体的な事例を用いて語られました。

 顔色が悪い知人に対して「あなたは顔色が悪い、どこか病気かも知れないから、すぐに病院に行きなさい。遊びすぎじゃないの。ほっといたら危ない。間に合わなくなるわよ。」と脅かし、更には、「私の姉は肝臓癌で6月に入院して9月に亡くなったの、たったの3カ月よ。」と続けだんだん追い込んで行きます。右脳を使わず、相手への思いやりに欠けていることにまったく気づかない人ですな。

 顔色が悪い知人に対して、あなたは顔色が悪いと直接は言ってはいけないな、私も言われたら嫌だしどうしょうと右脳を使う人は考えてから言葉にします。「私の顔色どうですか?ロビーに入ったら少し目眩がしてね、だから、良かったら一緒に観てもらえませんか?具合が悪くなったら膝を叩いて合図をしますから、その時は一緒に出ましょう。」とさも自分が病気であるかのように言うだけで、知人も快く返事をするでしょう。これで互いに救われますな。自分が何ともなくてもこういう言い方をすれば、知人も安心してあなたと楽しい時間を過ごすことになりますな。

 ただし、嘘つきは何ものも産み出すことがありません。右脳や左脳どころか、まったく頭は使われず一つの摂理もありません。いらんことばっかり言う。この癖のある方には近寄らないことですな。伝染してしまいます。嘘は嘘を呼び、真実から遠のくばかりです。
 前述のように、事実が全て良いわけでもありません。人によっては勝手にさんざん他人の悪口を言った挙げ句に、あなたもそう思うでしょう。と念を押し、「そうね。」などと答えたら最後。悪口の相手の耳元であの人はあなたのことをこんな風に私に言ったと告げ口されるのがおちです。ほとんど病気のようなタイプの方ですが、必ず周囲に何人か思い当たる方がいらっしゃらないですか
 そういう方との長話は禁止ですな。よされた方が懸命聡明。適当に相づちをうったりしたら、えらい目にあってしまうかも知れませんな。怖い存在です。早々に挨拶をして、去る。これしかありませんな。と結ばれました。
 第1回同様、14回生や他の講座修了者で会場は満杯。満場の拍手で講師を見送りました。これからも充実した講座が続きます。ご期待下さい。

実践講座
「山形の郷土食とスローフード」 
広告プランナー・山形スローフード協会理事 浅倉 かおりさん

 『山形の郷土食とスローフード』と題し、広告プランナー、山形スローフード協会理事として活躍中の浅倉かおり氏による実践講座からスタート。

 小さい頃から身体が弱く、「身土不二」…自分が生活する土地から生まれた農産物が、自分の体質に合い、健康を保てるという意味を噛みしめながら現在のスローフード運動に取り組む経緯を語られました。
 「質のよい食品や酒類を守り、質のよい素材を提供する小生産者を守ることの大切さ、地元農産物の自給率アップで健康的な山形にしたい」とこれからへの抱負とその理由をわかりやすくお話いただきました。

 そして、上山のキクイモにまつわる嫁姑の屁話に会場は笑いの渦、浅倉さんご自身もキクイモをたくさん食べて困った話を吐露され、会場の人たちは終始笑わされ、楽しい講座となりました。

■第4回講座  平成16年10月21日(木) 遊学館

基調講演
「ことばと出会う、人と出会う」
フリーアナウンサー 遠藤 泰子さん

 基調講演はフリーアナウンサーとして、また講演や研修の講師としてもご活躍中の遠藤泰子氏。
 「ことばと出会う、人と出会う」と題して、様々な人との関わりの中で出会った言葉についてお話しされました。テレビやラジオの現場での失敗談やエピソード、タクシーや飛行機での出来事、病院での経験談など、ユーモアを交えた魅力的な語り口に、会場は笑いに包まれた楽しい講演となりました。

 現代は、機械の発達で言葉がなくても用事を済ませることができ、若者は正しい日本語を忘れつつあります。言葉が危うくなっている時代だからこそ、言葉に細心の注意を払って、人の立場になってものを言うことが基本です。コミュニケーションは言葉のキャッチボールから始まり、心と心の関わりが生まれます。言葉の役割は伝達であるが、伝達の言葉を心でくるんで人に渡すことが大切、100人いれば100通りのくるみ方があります。一度出してしまうと決して消せないのが言葉のやっかいな部分。私達は言葉の大切さを若い人に伝えていかなければいけないと主張されました。
また、言葉によってボロボロに傷つけられ、言葉によって励まされたご自身の体験も話されました。人に会うのもいやで、泣いてばかりいた時、「とことん地獄を見てきて下さい。あなたはもう一度マイクの前に戻れる人だと私は信じています」という手紙をもらい、立ち直ることができたそうです。「人のあたたかさの延長に今の自分がある」という言葉に、参加者は深い感銘を受けました。

 最後に坂村真民さんの詩『二度とない人生だから』を朗読して、「みなさんも二度とない人生、感覚のアンテナをピカピカに磨いて元気に歩んでいきましょう」と結ばれました。 

実践講座
「笑顔やまがた/マナー仙人~上手なおつきあいのすすめ」
オフィスファルコン代表・接遇アドバイザー 加藤 希代子さん

 続いての実践講座は、日本航空スチュワーデスとして15年間で28カ国を訪問、6年間のイタリア生活の後、現在山形で接遇アドバイザーとしてご活躍中の加藤希代子氏。「笑顔やまがた/マナー仙人~上手なおつきあいのすすめ~」と題して、本当の意味でのマナーのあり方、人との関わり方についてお話しされました。

 マナーは「~してはいけない」という縛られるものではなく、みんなが楽しく過ごすための、何のためにマナーがあるのか考えることが大事。サービスは有料だがマナーは無料、ろうそくの光のようにあたたかく照らしながら少しずつ広がります。「郷に入れば郷に従え」は素晴らしい言葉であり、その土地や人をよく知っているみなさんが厳しい目で見つめながら、日本独自のマナーを作っていきましょう、と主張されました。

 また、言語をつかさどっている左脳をトレーニングすると、コミュニケーションが上手になるということで、「さかさしりとり」(言葉の頭文字が次の言葉の最後の文字と同じになるしりとり)や自己紹介ゲームを紹介し、会場のみなさんも参加しての楽しい雰囲気の講座となりました。

■第5回講座  平成16年11月26日(水) 遊学館

基調講演
「アンティークから見た世界~なんでも鑑定団の裏話」
骨董評論家  岩崎 紘昌氏

 基調講演は、テレビ番組でも大活躍、骨董評論家の岩崎紘昌氏。「アンティークから見た世界・なんでも鑑定団の裏話」と題し、長年骨董の鑑定に携わった中での体験談や11年続いたテレビ番組で、地方や海外に出張鑑定に行かれた際の様々なエピソードをユーモアたっぷりの語り口調でお話し下さいました。岩崎さん曰く、最近では鑑定の依頼が7、8年前と比べかなり減っているとのこと。理由の一つに高い値段がつくと泥棒に入られるケースが非常に多いといった話をされ、会場の人たちの興味を惹いておられました。

 高度成長を成し遂げた資本主義社会の日本では、物の値段を判断できなければ生きてはいけない……と岩崎氏。戦後物資の少ない時代に母親が5円で買ってくれたガラス玉の指輪に500円の鑑定をしなければならなかった苦い経験を振り返り、「他人が欲しいか欲しくないかで値段が決まる」といった現実にも触れられました。しかし、物は2つの値段の形成で成り立っている。たとえガラス玉でも自身にとっては1億の価値がある。価値というのは心の豊かさへの反映、今の心を映す鏡である。大切な物であるならば、決して秘することなく、子・孫の代にその大切さを語り継がなければならない。それが無理ならば書面に書き残す。それこそが今この時代に生きている我々の仕事である、と熱く語られました。また、値段は上がれば下がる、下がれば上がるといったように常に変化するものであるということを認識すべきだとし、青森県出身の画家で「馬鹿志功が、また絵を描いている……」と近所で言われた少年がイタリアで賞を取ったことをきっかけに爆発的に売れ出し、その価値をあげた棟方志功の例をあげてお話しされました。そして最後に、値段が高いからすばらしい、安いからどうのと言うことはない。人間は安くても捨ててはならない物がある。それが文化である……と締めくくられ、物の価値についてどのようにとらえるべきか、考えさせられる講演となりました。

実践講座
「温泉!効用と利用の仕方」
山形県温泉療法研究会 片桐 進氏

 実践講座では、肘折温泉を訪れる湯治客を対象に長年に渡り療養相談を受けてこられた山形県温泉療法研究会の片桐進氏が、今回は「温泉!効用と利用の仕方」と題し講演されました。

  火山国ゆえの日本は、新潟県中越地震の様な恐ろしい自然災害に幾度も見舞われてきた。しかし、人々は力強く生き乗り越え、その自然の恵みである温泉に親しんできた。類の温泉好みと言われる日本人の温泉との関わりや「湯治」「湯治場」という独特な温泉活用の歴史や文化を、片桐氏は分かりやすく紐解きながら温泉について講演されました。また、山形県内には山間の鄙びた一軒宿から温泉街と称される温泉地までその数200以上もある。その質も効用も湯治場が持つ文化もそれぞれに多種多様であることなどを、スライドで温泉地を取り上げながら紹介されました。

  最後に専門的な立場から正しい温泉利用法5項目を提示されました。1、入浴回数は一日4回。2、湯船に入る前は十分に身体を洗い流す。3、温泉水で上半身・下半身を合計20回程度打ち湯をする。4、血圧の急激な上昇防止のためにゆっくり湯船に浸かる。5、湯船から上がってから15分位は身体を休める。これらを充分に守り、温泉を楽しく利用しましょう、と講演を結ばれました。

■第6回講座  平成16年12月16日(木) 遊学館

基調講演
「健康でいきいきシニアライフ」
料理研究家 金子 ひろみ氏

 1996年に、アトランタオリンピック女子マラソンの有森裕子選手の栄養サポーター。2000年は、シドニーオリンピック女子マラソンの高橋尚子選手の食事サポーターとして同行。基調講演された金子ひろみ氏が考えるメニューは、「メダルを呼ぶ栄養学」として話題になりました。現在、テレビの料理番組にご出演の他、料理研究家として様々な場でご活躍中です。

 朝食の欠食による一日のエンジンの掛かりにくさ、免疫機能の低下によるアトピーや花粉症の増加など、食習慣が変化してきたことは、様々な弊害をもたらすと言います。肉料理は身体に悪いからと敬遠して、魚料理ばかりに片寄らないこと。なぜなら肉類や魚介類、大豆製品のタンパク質のアミノ酸がすべて違うものだからと、アンケート結果の表や図を示しながら「なぜそうなのか」という科学的根拠などをわかりやすく説明してくださいました。

 また、健康な身体を作るためには、PFC比(P:タンパク質、F:脂質、C:糖質)がきれいな正三角形になることが理想的だそうです。金子氏お勧めの食事形態は、ズバリ定食もの。欲張れば、主食、汁物、主菜、副菜、副々菜、飲み物、フルーツといきたいところですが、せめて主食、具だくさんの汁物、付け合わせのある主菜、主菜に足りないもので副菜をとりたいものです、とも話されました。 生活習慣病を避けるために、旬の緑黄色・淡色野菜をたっぷりとること、「骨の銀行」にたっぷりとカルシウムを蓄えておくこと、身体に合った伝統的な食材を上手に取り入れること、食事は毎日のことなので「こうしなければならない」と堅苦しく考えず、なるべく良い食材をとるように心がけることなど、とても具体的で楽しく食のお話を伺うことができました。

実践講座
「薬草と食品の健康効果」
山形県衛生研究所研究企画専門員・薬学博士 笠原 義正氏

 薬学博士の笠原義正氏が実践講座。現在、山形県衛生研究所研究企画専門員として勤務し、山形県の薬草や食品の機能についても多くの研究をされています。この日は「薬草と食品の健康効果」と題し、病気を予防してくれる食材を紹介、その健康効果について話されました。

 健康な体づくりに欠かせない食品には3つの機能があり、一次機能は栄養、二次機能は嗜好、三次機能は老化防止や病気予防など生体調節を行う機能を持っている。笠原氏は健康促進のため、山形で採れる三次機能の高い食品を多くの人に食べてもらいたいと考えています。昔から日本は祭事や農作業にまつわる行事食など数多くあり、その内容を見ると実に体の機能を高めるものばかりで、そのような伝統食が長寿国をつくった要素の一つであると考えられています。そんな中で笠原さんが今特に注目しているのが、何百年も前から利用されてきた紅花と食用菊。この2つには血をサラサラにしたり、鎮痛作用、鎮静作用、発癌予防、コレステロール低下作用、活性酸素除去作用などの働きがある。このことは1000年以上も前の文献でも記されており、すでに科学的にも検証済み。山形の食産物には体に良い食材がたくさんあり、地元で採れた旬の食材を食べていけば病気予防となるだけでなく、地産地消を推進していくことにもつながると言います。

 笠原さんは今後も山形の食品を科学的に調べながら、近い将来「山形発・無病息災食」の提唱を考えています。

■第7回講座  平成17年1月21日(金) 遊学館

基調講演
「プロジェクトX~私の出会った挑戦者たち」
アナウンサー 国井 雅比古氏

 今期最後の仙人講座は、NHK「プロジェクトX」の司会でおなじみのアナウンサー国井雅比古氏。「プロジェクトX~私の出会った挑戦者たち~」と題して、番組制作にいたるまでの舞台裏や苦労話をまじえて、私たちに感動を与えた挑戦者たちの姿を熱く語って頂きました。

 この番組を企画した当初は1年続くかと言われ、準備から軌道に乗るまで、制作スタッフの苦労と情熱は、並々ならぬものだったそうです。主題歌とエンディングは中島みゆきさんの歌、田口トモロヲさんの独特の渋いナレーション、テーマの掘り起こしと素材集め。次々と番組の骨格が決定する中で一番問題になったことは、商品名や企業名を出せないことと、スタジオ演出をどうするかということ。検討した結果、最低限の商品名と企業名は使うこと、スタジオに本人を呼ぶことという画期的な演出が生まれました。関係者がひとつになって追い求めたドキュメンタリーと、登場する挑戦者たちの真実の姿は、視聴者に大きな感動と勇気を与えました。

 巨大台風から日本を守る「富士山頂レーダー」製作チームの伊藤庄助氏と、パイロットの神田真三氏。「瀬戸大橋」を造り不可能を可能にした伝説の技術者、杉田秀夫氏。世界規格「VHS」を開発した窓際技術者、高野鎮雄氏。24年に及ぶ歴史的難工事の末「青函トンネル」を完成したトンネルマン、大谷豊二氏。戦後の日本の偉業を成し遂げた“無名の日本人”のお話が次々と続きました。

 国井氏は、「プロジェクトXはだれでも主人公になる。だからこそみなさんが感動する」と主張します。最後に、96歳という高齢でゴビ砂漠に300万本のポプラを植えた遠山正瑛氏が言い続けた「途中でやめれば失敗、続ければ成功」「やらなければできない、やればできる」という言葉を会場のみなさんに贈り、「厳しい冬の時代を乗り越えて、すばらしい山形をつくってください」と結ばれました。まさに今期の締めくくりにふさわしい感動的な講演となりました。

修了式

 第7回仙人講座の基調講演終了後、平成16年度仙人大学校の修了式が行われました。県生涯学習文化財団の大乗文利学習振興部長と修了生代表の鈴木一夫さん(山形市)が挨拶。仙人ライセンス取得者は第1回から数えて1、650名となりました。