仙人講座/第16期 (平成18年度)

■第1回講座  平成18年7月25日 遊学館

 基調講演 
「楽しく、美しく年齢をとろう」
声優 加藤 みどりさん

 基調講演はベテラン声優の加藤みどり氏。お馴染みのサザエさんの声で「こんにちは」と元気いっぱいに登場し、「楽しく、美しく年齢をとろう」と題して、終始軽快な口調で語られました。
 アニメが「電気紙芝居」と呼ばれ、蔑(さげす)まれていた46年前のデビュー当時の悲喜こもごものエピソードから最近のお仕事に関することまで、私たちが普段接することがない世界を存分に楽しませてくださいました。

 ご両親を早くに亡くされて以来頼りにしてきたお兄様の闘病に際してのお話には、一同吸い込まれるように聞き入りました。深刻な病状が続くお兄様によって、氏ご自身が明るく元気にさせてもらっていること。それに気付いてから「生きる」ということを深く考えるようになられたとのこと。人は誰でもどんな時でも、誰かのために、何かのために生きている。誰かに何かしてもらうより、誰かのために何かしてあげることが大事で、そこに喜びを感じられるのは幸せなことだと力説されました。

 美しく生きるためにまず大事なのは背筋を伸ばすこと。さらに、呼吸法や発声法、雑巾がけ掃除の奨め等。「暇はあるがお金はない人」が今すぐにでも始められることとして、しっかり実演を交えて紹介してくださいました。いちばん身近にいる人を大切にすること、思いやりのある言い回しを心がけること等、いずれも説得力のあるお話でした。

 歳を取らなければ絶対に出来ないことがある。それは人生のプロとして生きて行くこと。今まで培ってきた経験や知識を生かし、言い訳をしないで、自分の欠点を直す努力をしながら、プロらしく生きて行こう。人生に「第二」はなく、第一の人生の延長だと結ばれました。人生のプロにとどまらず、声のプロ・語りのプロでもある氏のテンポ良いお話は、最後まで一同を惹きつけました。

 実践講座 
「地球と人のまあるいつながり」
広告プランナー 浅倉 かおりさん

 実践講座は、山形市内にお住まいの広告プランナー・浅倉かおり氏。3回目となる今回は、「地球と人のまあるいつながり」と題して、食べ物のことやくらし術、氏とかかわりのある方々のお話も交えて楽しく語ってくださいました。

 大病を経験して気づいた食の大切さ。そのなかで出合ったのが、古来中国で言われていた「身土不二」という言葉だったそうです。身近な場所で育った作物を食べることが健康を保つという、その教えからスローフードにも興味を持ち、実践されているとのこと。農薬や添加物が使われていないものを食べて、身体も精神も健やかに過ごしている方々の具体例も加えてお話くださいました。

 安全な食べ物をはぐくむには土と水が重要だと気づき、そのために地球環境が大切だと考えるようになったといいます。合成洗剤に関しては、地球のみならず卵巣や睾丸など人体にも影響を与える「経皮毒」が、少子化にも少なからず関係しているのではないかという考えも述べられました。新居に移られたのを機に、それまでたくさん揃えて使っていた合成洗剤類を、重曹やクエン酸、塩などに替えられたということで、それらの具体的な使いかたもご紹介してくださいました。

 日々の暮らしのなかで気軽にできる環境改善は、節約にもなるということで、ご自身のお買い物用バッグなども具体的に示して分かりやすく語られました。また、ゴミ置き場の掃除当番の経験を楽しく詳細に語りながら、山形市のゴミ仕分けクイズへと続けられ、会場を巻き込んだ楽しい雰囲気に包まれました。最後に、「自分に対しても地球に対しても、うしろめたくない生き方をしていきたい」という言葉を残され、会場の皆さんも深く考えさせられる実践講座となりました。

■第2回講座  平成18年8月31日(木) 遊学館

基調講演
「風水で300歳生きられる」
静岡県立大学教授・風水研究科 高木 桂蔵氏

 昨年に引き続き2回目となった、静岡県立大学教授の高木桂蔵氏の基調講演。「風水で300歳生きられる」と題し、生きにくい世の中を明るく楽しく生きていく、先人の智恵である風水について、わかりやすくお話いただきました。

 風水は先祖から伝わった知恵の結晶であり、目的は人が幸せになるためにあるといいます。日当たりがよく、風とおしがよく、湿気がなくて、使い勝手のいい家というのが「いい家」の条件。建築の基本と風水の基本は同じだそうです。それは、先人の建築に対する長年の知恵の積み重ねであり、現在も参考になるものがあるそうです。

 また、見えないものを見る力が大切ということも主張されました。とかく見えるものだけを信じ、世の中に役に立たないものは排除し、合理主義を追及する風潮が現代にはありますが、むかしから続くその土地の人々の信仰や願う気持ち、「見えないものを見る力」が大切であるといいます。さらに、「三本指の教え」を示され、「お前ダメじゃないか」と相手に人差し指を向けたとき、三本の指は自分を向いている。人を批判する前に、自分を振り返り3倍気をつけなさいという教えをお話されました。

 郷土唱歌、わらべうた、民謡などにも詳しい氏は、忘れられつつある各地のうたを採取し、その普及や保存にも尽力されているそうです。お話のあいだに、たくさんのうたを実際に披露していただき、いにしえのころからの音色に、会場はあたたかく優しい気持ちに包まれました。そして、「世の中いいことも悪いこともある。そのなかで自分が明るくなって福の神になろう。見えないものを見て、明るく前向きに考えて生きていこう」と結ばれ、盛大な拍手で終了しました。

実践講座 
「心づかい、言葉づかい」
フリーアナウンサー 古池 常泰氏

 実践講座は、フリーアナウンサーとしてラジオやテレビで活躍中の古池常泰氏。「心づかい、言葉づかい」と題して、言葉を通した人と人のつながりの大切さをポイントにまとめ分かりやすくお話いただきました。

 最近の若者は、携帯電話やメールの普及の影響でしゃべらなくなってきたと言われます。コミュニケーションには言葉のキャッチボールが大切で、相手の言葉をきちんと受け止め、それをちょっとした心づかいで返すことが極意だそうです。

 また、コミュニケーションを円滑にするコツとしては、現役時代に先輩から教わった「一に盆栽、二に掛け軸、三にガキ」という言葉を例に挙げ、相手を褒めることが大切だということ。「ありがとう」などの気持ちのよい言葉が笑顔と一緒になると、相手が脳を刺激され恍惚状態になるということ。「医食同源」という言葉にかけて「医語同源」を挙げられ、医療と同じくらい言葉は大きな力があることなどを、次々とテンポのよい語り口でわかりやすく説明されました。
 そして、「言葉は最強の武器であるけれども、心づかいのない言葉は凶器にもなる」ということで、使い方を間違えると、人を鞭で打つようにズタズタに傷つけてしまうということも付け加えられ、「言葉は消しゴムで消すことができませんから、心づかいをもって大切に使いましょう」と主張されました。

 最後に、音読はとても体によいとのことで、「皆さんも音読をしましょう」と呼びかけられました。声に出して読むことが脳を活性化するということは、東北大学の川島隆太教授の実験でも明らかになっているそうです。第1回きみまち恋文全国コンテストで大賞を受賞した柳原タケさんの手紙「天国のあなたへ」を朗読し、盛大な拍手で終了しました。

■第3回講座  平成18年9月21日(木) 遊学館

基調講演
「人生をどん欲に生きよう」
女優 大山 のぶ代さん

 女優で、「ドラえもん」の声でもよく知られている大山のぶ代氏の基調講演「人生をどん欲に生きよう」は、その親しみ深いお人柄から終始会場を和やかな雰囲気に包んでいました。
 東京生まれ、東京育ち。4世代13人家族の一番下。大家族で4人もいたおじぃ様やおばぁ様始め周りの人からいろいろと生活の知恵を学ぶことができたことは運が良かったと懐かしくお話しされました。「一日5食」とは5回食べることではなく5つの色、赤青白黄色黒の食べ物が並んで初めて満足な食事だということ。もったない、無駄なことをすると「背負い水」と叱られて育ったこと。「戦争は嫌だな」と思いながら焼け野原にキュウリやナスなどの畑を耕して食べたこと、など。

 特徴のある声を活かして学校の放送部から女優へと進んだ道でも、声と家族から教えられたことが大いに役立ったと誇りを持って話されました。目立ちたがり屋で賑やかな性格だったので芸を身につけて、誰にも迷惑かけずに生きようと俳優座へ。その修業の時代にも入院中毎晩お母様から聞いた話のことが役に立ち、何でも身につけておくことの大切さを知ったと言います。持ち前の明るく積極的な性格に助けられ、当時まだ珍しかったアクアラングのアルバイトや裁縫など様々なアルバイトをされたとのこと。

 その頃、テレビの時代がやってきました。卒業してすぐに仕事が決まって、TBSの「奥様多忙」というドラマに「女中のさっちゃん」という役からスタート。おもしろい声なのでコントの相手役などにも選ばれ仕事が増え、幸せだったとおっしゃいます。そして「名犬ラッシー」、「ブーフーウー」などの声優にも幅を広げました。「それもこれも、いろんな事を身につけておいたお陰」と、家族への感謝をいつも忘れないでいたことを少し感激気味に話されました。

 「他人様に会うときには、少しはおしゃれをしよう。これからの70代を若々しく生きていたい。そのためにいろんなことに興味を持とう」と呼びかけ、最後に「ぼく、ドラえもん。今日はありがとうございました」とお馴染みの声を演出、満場の拍手と笑いを浴びて笑顔で退場されました。

 実践講座 
「一歩踏み出す勇気~みなさん、素敵に歳を重ねましょう!」
シンガーソングライター 丹波 恵子さん

 南陽市宮内出身でシンガーソングライターの丹波恵子氏の実践講座はギターの弾き語りもあり、いつもの講座と少し違ったミニコンサートのような雰囲気で会場を魅了しました。

 丹波氏は6年前から遊学館と文翔館で毎年コンサートを開いています。音楽活動を始める前までの15年間は子育てに夢中でしたが、少しずつ詩を書いたりしていつか曲を付けて歌ってみたいと夢を抱いていました。しかし、さぁ始めようとした時、一歩踏み出すには大変な勇気が必要なことを痛感しました。というのも、子育て中は家庭内のことなどでストレスがたまり疲れ切っていました。子供から「お母さんは、なぜいつも怖い顔をして笑わないでいるの」と聞かれ、ハッと自分に気づきました。そこから抜け出すためにはパートの仕事以外に何か生きがいを持たなければと思い、自分にできることは何かを考えました。それが音楽でした。そして、その時にこそ一歩踏み出さなければそれで終わってしまうと思い、自分からすすんで地域の仲間の輪の中に入っていき、少しずつ音楽活動を始めました。

 やりたいことが見つかったら、子供がいるからとか、仕事で忙しいからとか、何かのせいにしないこと。そして、なによりも心身ともに健康でいること。無理をしないで一歩前に踏み出していくために、自分から声掛けをしてコミュニケーションを図り出会いを楽しむこと。そうしていけば、新しい自分が発見できるし、しぜんとストレスからも抜け出す力がついてくる、と丹波氏は言います。
 82歳で亡くなられた実母に病室で歌ってあげた『娘より』。そのお母様がよく歌ってくれた子守歌。会場の隣同士で自己紹介をし合う挨拶を呼び掛け全員で歌った『ふるさと』。丹波氏の優しく澄んだ歌声がギターの音とともに会場に心地よく響き渡りました。「生きがいを見つけ、一歩一歩ゆっくり前へ踏み出して行きましょう」と結ばれ、ギターを手に講座を終えました。

■第4回講座  平成18年10月19日(木) 遊学館

 基調講演 
「徳川家康に学ぶ100歳食入門」
食文化史研究家 永山 久夫氏

 長寿村の食生活を長年にわたり調査・研究し、『100歳食入門』や『歴史は食で作られる』などの著書を始め日本経済新聞と読売新聞など週3本の連載を執筆中の食文化史研究家・永山久夫氏の基調講演は、主にどうしたら病気をしないで長生きできるかがテーマでした。自分の身体は自分で守る基本的な生活姿勢が大切。そのためには健康についての情報を自分で見つけ日頃から身体を酸化させないような食事をする健康管理が大事です。元気で長生きできる人は、抗酸化成分を摂るのが上手だと言います。

 香港の男性が長寿世界一のわけは、サポニンという酸化を防ぐ成分のお茶を飲んでいるからです。カテキンという成分もあり、老化防止にはとても良いと言われます。また、ストレスには朝陽を浴びて毎日ニコニコして脳の中にセロトニンを増やすと良いとのこと。セロトニンは鰹節に多く含まれています。日本の古くからの和食には長生きできる成分が多く、味噌汁にはミラノイシン、納豆にはポリノグルタミン酸などがたくさん含まれています。アメリカの「アルツハイマーと闘う食べ物ベスト20」では日本食の小豆がトップです。アントシアニンやサポニンという抗酸化成分が含まれているからです。さらに永山氏は動くものより、根を張る野菜や果物、山菜など動かないものの方が体に良いと言います。動けないので紫外線を浴びてしまうかわりに、子孫を殖やすために抗酸化成分を自分で一生懸命作ろうと成長するからです。しかし、人間は自分で抗酸化成分を作ることができません。野菜をたくさん食べるなどして食事にも工夫を凝らさなければいけないというわけです。

 徳川家康は75歳まで生き、65歳までに12人も子供を作るほど元気でした。それは味噌おにぎりを食べていたからで、ご飯と味噌にはアルギニンというアミノ酸がいっぱい含まれています。当時は麦飯でしたが、麦には頭の回転に効くビタミンB1も含まれています。

 他に、小林一茶や前田利家の奥方まつなどの話から「生き方は食べ方でもある」と話され、最後に「笑うと癌細胞が消える」と言う永山氏の合図で会場一斉に“高笑い”して講演を終了しました。

 実践講座 
「心豊かな生活のための『食』~山形の魚食文化と食育の必要性~」
山形丸魚相談役 中村 好太郎氏

 山形の魚市場で長年活躍された山形丸魚相談役の中村好太郎氏の実践講座は、「心豊かな生活のための『食』~山形の魚食文化と食育の必要性~」と題して行われました。氏は近年、ライフスタイルの変化など時代の趨勢で食生活のあり方が子供や若年層を中心に嗜好が変わり、魚食関係にも大きな影響が出ていると懸念、ご自身の魚市場での歩みを振り返りながら静かな熱のこもった講演をされました。

 山形は山国で交通の不便なために新鮮な魚類が入りにくかった頃までは、手間暇掛け熟成乾燥させた日持ちの良い塩っぱい新巻鮭や身欠きニシンなど塩乾物がどこの家庭でも好まれ食されていました。しかし、今は塩っぱくなくすぐに食べられるような加工品や切り身が多く出回るようになりました。漁業界も昭和50年を境に、二百カイリ問題や捕鯨禁止など国際的な取り決めにより大きなダメージを被り様変わりしました。そこで輸入の拡大、養殖の発展などにより、いわゆる“取る漁業”から “買う漁業” “育てる漁業”へと漁業界は転換しました。一方、今まで高級でなかなか食べられなかったエビやカニ、マグロなどが身近に食べられるようになりました。従って全体的な水揚げ量は変わらずに推移してきていると言います。

 日本は世界のほぼ1割の年間1000万トン程の漁獲量があります。山形県の漁獲量は少なく、昭和30年の1万500トンをピークに平成17年は7980トンでした。かつてはニシンが良く取れ、身欠きニシンとして昆布巻きや天ぷらなどで。また鱈はボーダラとして、エイはカラカイとして、それぞれ野菜などと煮物にしてどこの家庭でも食卓を飾りました。魚は神様に献上する食べ物でもあるように古くから親しまれ愛されてきた食文化の一つ。中村氏は最後に、「今の子供達は魚を食べたがらない。食文化を見直しもっと魚を食べてほしい。最近のデータによると魚4割、肉6割と、魚より肉を食べる人が増え肥満が問題になっている。この数字を逆転させたい。動物性タンパク質は是非魚で取ってほしい」と付け加えられました。講座は魚の価値を見直す機会にもなりました。

■第5回講座  平成18年11月16日(木) 遊学館

基調講演 
「あったかい言葉で話したい」
フリーアナウンサー 遠藤 泰子さん

 基調講演は、フリーアナウンサーの遠藤泰子氏。「あったかい言葉で話したい」と題し、アナウンサー歴40年のなかで出会った数々の言葉についてお話されました。まずは、思わず吹き出しそうになる言い間違え、愉快なエピソードを織り交ぜ、魅力的な語り口で聴講生を惹きつけます。

 「言葉」という漢字の成り立ちは「心」から転じたもので、あたたかい心で話せばあったかい言葉になるし、とげとげしい心で話せばとげとげしい言葉になる。言葉のひとつの大きな役割は情報伝達であるが、言葉を心で包んで渡すことが大切。人とのかかわりのなかで、いろいろな人の言葉に出会い、いろいろな人の人生に出会い、その刺激の積み重ねによって今の自分があるそうです。

 また、言葉によって傷つけられ、心を閉ざしてしまった経験もお話されました。いいときには人は集まってくるが、何かあるとさっと去っていく。人生のなかには、どうあがいても、どう努力しても、本当にどうにもならない時期があるとのこと。そんな状態のときに支えられたのは、やはりあったかい心のこもった言葉のパワー。心が解き放たれ、すっと肩の力が抜け、いい意味で開き直ることができ、前向きに生きることができたそうです。

 現代は機械化によって言葉がなくても事が足り、マニュアル化された若者は自分の心で話せなくなっていると言います。しかし、機械がどんなに進歩しても、人の心を斟酌したり状況に応じた判断はしてくれない。心は人と人とでしか伝えられないと主張されました。最後に、坂村真民さんの詩『二度とない人生だから』を朗読して、「みなさんも二度とない人生、心のアンテナをピカピカにして前向きに歩んでいきましょう」と結ばれ、会場は大きな拍手に包まれました。

 実践講座 
「誰でもできる!若返り体操法」
やはぎ接骨院院長・アスレチックトレーナー 矢萩 裕氏

 実践講座は、やはぎ接骨院院長でアスレチックトレーナーの矢萩裕氏に、「誰でもできる!若返り体操法」と題してお話いただきました。「最近、自転車で遊佐町までの300キロ往復に挑戦してきたんです!」と元気いっぱいのお話から始まり、健康を維持するための秘訣、家庭で簡単にできる体操を伝授いただきました。

 健康を維持するために大切なことは3つあるそうです。1つめは、三度の食事で必要な栄養をとること。1日に必要な栄養素や噛むことの必要性など、スライドを示しながら分かりやすく説明していただきました。2つめは、十分な休息と睡眠をとって体を休ませること。3つめは適度な運動をすること。この3つのバランスがとれていれば、若い人も年配の人も、年齢に関係なく健康を維持することができるそうです。

 いま話題になっているメタボリック症候群のお話では、健康診断の数値を見てこれからの生活をどう方向づけるかが重要であること。また、自分の体を知ることの重要性ということで、肩や骨盤の高さ、耳・肩・腰・くるぶしまでまっすぐかどうかチェックし、気づかなかった体のねじれがあれば、それを正していくことが大切だと述べられました。

 人間は、加齢とともに体のいろいろな部位に痛みが出てきます。今回は、それらを緩和するストレッチや体操法をたくさんご紹介いただきました。ストレッチのポイントは、無理に痛いところまでもっていったりせず、しっかり伸ばしてあげること、伸ばしているということを実感することだそうです。運動をするときは、自分に適した運動を把握し、自分ができる範囲の回数で無理なくしっかり続けること。不安なことがあれば主治医の先生と相談しながら、その解決法を生活の中に取り入れることが大切であると主張されました。最後に、「食事・睡眠と自分に適した運動で、健康で長生きする貯金をしていきましょう」と結ばれ、大きな拍手で講座は終了しました。

■第6回講座  平成18年12月21日(木) 遊学館

 基調講演
「挑戦か 傍観か ~精神満たさぬ自己中心の生き方~」
マナスル登山隊・南極越冬隊元隊員 高橋 嘉彦氏

 基調講演はマナスル登山や南極越冬の元隊員でマスコミや実業界でも活躍され、現在は札幌にお住まいの高橋嘉彦氏。氏は近年の健康ブームを危惧して、「もっと「価値ある長寿」を作り出すために体より心を鍛えよう」と切り出しました。氏によると「価値ある長寿」とは、周りの人間からも支持されるような生き方をしているかどうかということ。しかし「日本人は平均寿命がトップクラスになったとはいえ、リスクから逃れることばかり考えている。自己中心的な生き方は最後まで精神を満たされない。これでは他の国からあまり尊敬されないのではないか」と言い、会場には静かな緊張感が漂いました。

 ご自分を振り返ると、精神を鍛えるのに探検という道場があったと語ります。南極や多くの山を踏破、2回目のヒマラヤ(昭和41年、当時28歳)ではクレパスに墜落し救出された体験談を話され、「人間は新しい経験を積むために生まれてきている」という人生哲学を披露されました。また「山登りというのは生産技術を手に入れること。ご飯を作ったりテントを張ったり、自然の中で生き延びるにはどうしたらよいか。体験だけでなく心も鍛えられ多くを学ぶことができた」とも話され、若い頃の探検が氏にとって大きな気持ちの転換でした。困難を乗り越えることは人を強くするという探検的な思考を持つことが大事だとも主張されました。

 さらに「人生80年、退職高齢者はいろいろな場面で挑戦的に乗り出す姿勢へと転換を図る時期に来ている。家に閉じ込まらないで長年の智恵を地域にどう結び付けるかを考え地域活動に乗り出すべきだ。地域活動は家庭のことを女房任せにしてきてまだその癖が抜けないような自己中心的な人間にはできない。信念をしっかり持った人でないとできない。皆さん、高齢者の居場所づくりを今からすぐ始めてほしい」と呼び掛けました。

 最後に、中学生殺害を予告する脅迫電話のあった鮭川村で老人クラブが「できることから始め隊」を結成し防犯活動を続けているお話では、協働・扶助の精神が宿る貴重な活動と紹介。さらに氏が北海道札幌で高齢者向けのFMラジオの開局に関わった体験談なども話されるなど、活気あふれる講演でした。

 実践講座
「民族の酒、日本酒の魅力~山形の地酒と地域文化を含めて」
出羽桜酒造社長 仲野 益美氏

 「民族の酒、日本酒の魅力~山形の地酒と地域文化を含めて」と題した実践講座では出羽桜酒造社長・仲野益美氏が、「日本人の英知を結集した酒が民族の酒・日本酒です」と誇り高くお話しされました。特に吟醸酒など特定名称酒は、山形県の醸造元では生産量の約50%も造られており全国平均の30%を大きく上回っていること。またその比率が高いほど経営体質が良いといわれ、機械化しにくく手間のかかる特定酒でも山形は今後も従来型の技術を活かした高付加価値少量販売の特定酒を中心に勝負していきたい、と力強く語りました。

 日本酒業界が置かれている現状については、他のアルコール飲料に比べて販売のシェアが10%を切るという非常に厳しい状況に置かれているが、アルコール度数の違いで税率が違うということが全くなくなったということもあり技術面で新しい発想の可能性が見込め、来期からは日本酒にも新しいレパートリーが出てくることが予想できると意欲を語りました。

 日本酒と健康についてもお話しされ、その中で日本酒にはアミノ酸が多く含まれていて日本酒を飲むと太るとか言われるのは大きな誤解だと強調されました。むしろ肴やつまみに注意しながらなるべく日本食と一緒に飲めば健康には大変に良いということです。「百薬の長」と言われる所以がここにもあるようです。氏はこれを「ほろ酔い健康法」と呼び、外国で今、日本酒や日本食がブームになっていることにも大いに期待したいと語りました。

 また日本酒には、他の酒にも世界中にもない「お燗をする」という飲食マナーがあり最近また見直されてきていることや、「お酒の横には水を」と呼びかけながらいろんなお酒の楽しみ方を広める「やわらぎ水運動」のことについても紹介されました。

 最後に、「お酒の本当の味わいというのは、飲む人の経験とか知識によっても変わる。ぜひ美味しいお酒を飲んで人生を楽しんで頂きたい」と日本酒をピーアールして講演を結ばれました。

■第7回講座  平成19年1月19日(木) 遊学館

 基調講演
「江戸庶民の暮らしぶり」
作家 石川 英輔氏

 基調講演は、NHKテレビ「コメディーお江戸でござる」でおなじみ、作家の石川英輔氏。「江戸庶民の暮らしぶり」と題して、現代と比較した江戸庶民の生活について分かりやすくお話いただきました。

 江戸時代の行政的な役割は大家さんと呼ばれる町人が担っており、基本的に町全体が「自分のことは自分でする」というポリシーで成り立っていたそうです。現代のように、国や行政に責任を押しつけるような意識はなかったようです。幕府は町奉行、町年寄、町名主と呼ばれる役人を配置しましたが、現代と比べると機能的にも人数的にも比較にならないほど少なかったそうです。にもかかわらず、凶悪な事件はほとんどなかったといいます。

 封建的でけっして豊かな生活ではなかったであろう江戸時代の生活。現代は交通機能の発達や機械化で、たしかに生活は便利になりましたが、現代と比べてはたして江戸時代は本当にみじめで同情すべき時代であったのだろうかと石川氏は問いかけます。たしかに政府や行政機能が発達し警察官の数も充実しましたが、殺伐とした事件が毎日のように新聞やテレビで報道されている深刻な現実があります。食べ物は大変豊かになりましたが、大人だけでなく子どもたちまでもが生活習慣病やうつ病に脅かされている状況があることをデータで示しながらお話されました。

 健康に暮らすためには、やはり「早寝早起き・食事・運動」が基本。10年前に奥様を亡くされ、今は一人暮らしという石川氏。江戸時代の生活に思いをはせながら、庭で野菜を育て、安全で自分の体にあったものを食べているお陰で、病気もせず虫歯一つなく過ごされているそうです。「私たちの体は3万年前のホモサピエンスの体の設計図と変わっていない。現代の便利な生活には合わないのだから、せめて江戸時代の生活の知恵を真似てみよう」と結ばれ、講演は終了しました。

実践講座 
「山形の経済状況とシニアのための生涯設計」 
荘銀総合研究所理事長 石川 敬義氏

 続いての実践講座は、荘銀総合研究所理事長の石川敬義氏による「山形の経済状況とシニアのための生涯設計」。地域・経済・人生というキーワードでどんな生き方が理想的なのかを考えるヒントになるお話をいただきました。

 生涯設計を考える上で認識しておかなければならないと前置きして、厳しい状況にも触れられました。国の借金は増え続け、エネルギー不足、食料不足など深刻な問題が山積みである。景気回復が報じられているが、生活保護世帯が増加し必ずしも豊かではないという状況。山形県の経済について詳しいデータを示され、一口に言えば「広い空間に年寄りが立派なマイホームに暮らし、農作物や物を作って一生懸命働いているけれども、生産物の付加価値が低いため収入が低くて国費に依存しなければならない」という姿だそうです。

 官民の関係の変化について、昔は公と官はすべてお役所が担っていたが、今は公は民の力を求め、官は民の意思決定を求めている。市民と行政の主体的領域の変化が生じて、行政ではどうにもできない分野ができて地域社会の姿が変化している。このように状況が変化するなかで、「高い所から俯瞰して見る鳥の目」、「周囲の変化に気を配りながら泳いでいく魚の目」、「現場にいって実体をきちんと把握する虫の目」で、ものを見ていくことが必要だと主張されました。

 6年前に脳梗塞で倒れられ、歩くということから再出発した経験を踏まえ、人間の存在価値についても触れられました。グランドワーク山形代表として、行政・企業・住民が協力して生活環境を維持向上させる運動も展開されておられる氏。今は人生を整理整頓して本当にやるべきことをしぼってやっているそうです。生涯を終えるときに、自分は人生という劇場でどんなパフォーマンスをしたか、家庭や地域社会でどんな役割をしたかがわかるという含蓄のある言葉に、自分の人生や存在意義を考えさせられる講座となりました。