仙人講座/第24期 (平成26年度)

■第1回講座  平成26年7月11日 遊学館

「日本の歌は私たちと共に」
作曲家・マルチアーティスト 青島 広志氏  テノール歌手  小野 勉氏

 青島広志氏は、作曲家としての作品数は200曲を超え、ピアニスト・指揮者としての活動も40年を迎えられました。最近では、コンサートやイベントのプロデュースも数多くこなしていらっしゃいます。(文中の曲目は、すべて青島氏のピアノ、小野氏の歌で演奏されたものです。)

 日本の歌というのはいつ頃から始まったか?民謡とか童歌とかは昔からありました。私たちが今、普通に演奏会で歌うような歌というのは、1900年ちょうどに作られました。滝廉太郎先生です。『花』という曲でピアニッシモ・フォルティッシモを日本人で初めて使った方で「減七の和音」(ディミニッシュ和音)を使っているところも天才的です。次に、中田章さんが大正元年に作られたと言われている『早春賦』。この曲は、実のことを言うと盗作です。モーツアルトの最後の歌曲『春への憧れ』という曲とほとんどメロディーが同じなんです。

 大正時代末期には3人の歌曲作曲家が生まれました。山田耕筰先生は、日本の音楽の父と呼ばれ、日本で初めての交響曲『勝どきと平和』を書いている。二人目の信時潔という方は、静かな感じの曲が多く、『行々子(よしきり)』は内面的に難しい曲です。三人目は歌謡曲の祖である中山晋平さん、3人のなかでは作品の少ない方ですが、『鉾をおさめて』などがあります。

 昭和になってきますと戦争の影がちらつき始めます。橋本國彦先生の『幌馬車』という曲は、戦争を暗示しているんです。平井康三郎先生は、戦争前に歌謡集を書いたことで戦犯として東京芸術大学の先生の席を奪われた方ですが、その中の『夏の宵月』なんかはとっても叙情的できれいな歌ですから、言いがかりな訳です。戦争が終わり、ポピュラーな伴奏系が突然解禁になって若い作曲家がこれを使うようになります。女性詩人の江間章子先生が作詞し、山田耕筰先生のお弟子さんに当たる團伊玖磨先生が作った曲『花のまち』、本当に明るい曲です。中田喜直先生(中田章氏の息子)は、『夏の思い出』という曲が一番有名です。

 ここからは生きている方。NHK初期に活躍した湯山昭先生の曲『おはなしゆびさん』あたりから、子ども目線の曲が生まれてきたわけです。『いぬのおまわりさん』の大中恩さんは、今90代でまだ活躍してらっしゃる。

 ついにテレビの時代になりました。51年前に「みんなの歌」が始まり、一番有名になったのは『手のひらを太陽に』でやなせたかし先生という漫画家の作詞、曲の方はいずみたくさんという方がお作りになった。最後は、宮崎駿さんが制作した「となりのトトロ」の副主題歌として書かれた『さんぽ』。この曲は、どこでも流行っていました。

 最後に、「これが114年の歌の歴史です。本当に名曲ばかりなので、小さい方達に伝えてあげて欲しい。これだけの方が二人に伝えれば、300人400人がこれらの曲を覚えていくということになると思っているんです。」と呼びかけ、受講者とともに歌い踊った講演を締めくくられました。

第2回講座  平成26年8月21日(木) 遊学館

「幸せの条件 ~これからの生き方~」
薬師寺執事 大谷 徹奘氏

 大谷徹奘氏は、「心を耕そう」をスローガンに全国各地で法話行脚されているかたわら、奈良少年刑務所・大阪矯正管区篤志面接委員も務めていらっしゃいます。

 日本で最初に世界遺産に登録された法隆寺、大仏さんの東大寺、そのちょうど真ん中の時期にできた薬師寺、奈良を代表するこの三つのお寺は、お墓を持たず、お坊さんは一切葬儀に触れることがありません。死んだ人を相手にするのではなく、心の勉強をするお寺です。皆さん方が一人一つずつ持ちながら一番扱いにくい、その心の勉強をするために私はここに来させていただいた。

 幸せを考えるための大きなヒントになる言葉、「身心安楽(しんじんあんらく)」。身というのは目に見えるものの世界、心というのは目に見えない精神の世界のこと。その目に見える所と見えない所のバランスが整った時に、初めて本当の意味で生きる喜びが押し寄せてくる。体が楽な時はらくちん(「楽身(らくしん)」)といい、心が楽な時は「安心(あんじん)」という。これが仏教の究極の目的なんです。昔から人間の一番の不安のタネは人間関係でした。人間関係が良ければどんな苦しい環境でも耐えられるし、一緒に頑張ろうって言えます。

 人と人との出会いをお経では「縁」と表現していますが、その上に自分の価値観をつけているうちは縁は育たない。好き嫌いを超えてこの縁をつかむ。それが「よっぽどの縁」です。
 「悟り」という言葉は、「自覚」と「覚悟」で「自覚悟(じかくご)」が語源です。「自分で自分の心が分かる」「自分で自分の心を決める」。迷っている私達は、どうしたら自分で腹をくくることができるんでしょうか。お経の中に「静観自得(じょうかんじとく)」が出てきます。人間は外に向かって指を指すのが得意だけれど、その指を内側に向けてみる。静かに見つめて自分でよくよく考えて納得する。

 静観自得をするための方法論として、私の師匠高田好胤が書いた言葉「偏らない心、こだわらない心、捕らわれない心、広く広くもっと広く、これが般若心経、空の心なり。」があります。自分の中途半端な価値観に偏ってこだわっているから苦しむ。それを一度横に置いて空のような広い所から自分を見てご覧、世の中見てご覧という言葉です。心を見つめることによって生きることを確認することが大事なんです。

 最後に、「この国を支える一人一人が自分の命を充実させていただくようなそんな生き方をお願いして、皆様方とのご縁を本当に感謝します。」と『よっぽどの縁』への感謝とともに、講演を締めくくられました。

■第3回講座  平成22年8月26日(木) 遊学館

「アクティブシニアの歩き方」
タレント  清水 国明氏

 清水国明氏は、テレビ、ラジオの司会やコメンテーターとして活躍される一方で、「NPO法人河ロ湖自然楽校」を設立するなど、自然環境派としての活動もされていらっしゃいます。

 自分は、どんどん分かち合って継承伝承して教えて配って、後は任したからね~と死んでいくのが安らかな死に方と思っています。年取ってからですよ、自分の人生だけを遣り遂げるというよりも次に残す、次の若者と赤ちゃんとかに関わって、自分の授かった財産や知恵をどんどん受け渡すという考え方を持ち始めたのは。

 5年前十二指腸癌で手術をしました。難しい手術だったんですけど、1ヶ月後の楽しい目標を立てました。その楽しみのためにリハビリも頑張れるんですよ、人間は喜びのために頑張れる。追いかけられる恐怖で毎日を生きるよりも、喜びを目標に立てて、手前にあるしんどいこともバーンて突き破るような生き方を手術時に学びましたね。ただ楽しいことをするために俺は生き長らえたのかな~とちょっと疑問に思い始めた時に、3・11が起きたんですよ。次の日大型バス2台借りて福島・岩手・宮城へ支援物資を山ほど積んで行きました。それから子ども、お年寄りをどんどん連れ帰ったわけです。何くそ~と思って、ぐ~と押さえつけられても、バーンって反発して飛び上がるくらいの力を養った子から、どんどん戻って行きました。手術をしてくれた医者からは、一人の芸能人を救ったというよりも、救った人がさらに何人かを助けるために働くというのは医者冥利に尽きると。自分が何のために生まれてきたのかというと、ちょぴっとでも役立てることができたっていうことが生まれてきた甲斐かな、生き長らえた理由なのかなと考えると力になりますわね。

 自分の人生やったら100%、10割生きた方が良いですよ。全部使い切って一番楽しいところでパコンと死ぬわけです。この死に方を「直角死」といいます。世の中、「楽(らく)」と「楽しい」ということは違うんです。「楽しい」ということは感動です。感動があるところに人も物もお金も集まってくるちゅうことでね。年寄りは、生きて見せて死んで見せなきゃいかんわけですよ。

 最後に、「最後のぎりぎりまで使い切って直角に死ぬということですね。直角に死ぬためには、モノ持って落ちていくんじゃなくてどんどん渡してからです。」と後半人生の生き方を説き、ユニークな発想溢れた講演を締めくくられました。

■第4回講座  平成26年10月7日(火) 遊学館

「とっても不思議な交遊録」
東フリーキャスター・城西国際大学客員教授 宮田 佳代子さん

 宮田佳代子氏は、城西国際大学で客員教授として教鞭をとるかたわら、テレビ界や子どものネット利用について等をテーマにした講演活動を行っていらっしゃいます。

 多くの人の本音を引き出すコミュニケーションってどんなコミュニケーションだろう。本音ってすごく難しくって、思っていることを何でも言えば良いのかっていったら、それは違いますよね。そういうのが本音ということではないというところからスタートしたいと思います。

 お喋りっていうのは本当に良いコミュニケーションの手段でして、人が生まれてから仙人講座に出るようになるまでにどのように成長していくのか紐解いてみたいと思います。人はまず自分の事を喋るんですね。2番目の段階として、相手に質問するようになります。そして、3番目が言葉のキャッチボール(A)をする。最後の段階、一番大事なのが喋りのキャッチボール(B)です。Aは単に言葉を聞いたらそれだけ、答えは別にどうでもいいんです。Bは、自分の質問に相手の人がどう感じたかを、五感で一生懸命推し量りながら喋ること。このBこそが、コミュニケーションというのではないかと思うんですね。コミュニケーションに必要な能力は、人の話を聞き取る力、自分のことを表現できる力、人に質問できる力、空気を読む力、良かれと思う空気を創る力、これら全てが備わった時に、コミュニケーション能力の高さになるのではないかと思います。

 今時の子ども達はコミュニケーション能力が低いと感じています。高校生の間では、やりとりに5分でイラッとするインターネット社会ですが、文字には空気がない、場所がない、どこで打っているのか分からないから誤解が始まるんですね。なるべく相手に気持ち・空気が伝わるようなメールを打つようにする。受け取る側も一辺倒に捉えないでおおらかな気持ちで文字だけを受け取る。子ども同士でルールを決めさせてくださいと提案していますが、でも、ずーっと携帯をいじっているような子の状況を止めさせられるのはやっぱり親。またお爺ちゃんお婆ちゃんにもそうしてもらいたいと思います。

 お喋り上手になるためには相手の話を一生懸命に聞こうとする気持ち、相手を知ろうとする気持ち、自分が絡んで行こうという気持ち、自分を伝えようとする気持ち、前向きな気持ちが必要と思います。汚いことも思いますが出さないのが人間。その人の経験したこと、思っていること、出そうとしている本音を全部受け取ってあげることが、本音の付き合いではないかと思います。

 最後に、「今日が『おはよう』で始まって、誰かに自分のことを喋り、誰かに質問し、誰かと共通のことで笑えるような、そんな一日だったとお布団の中で振り返って欲しい。」とコミュニケーション能力を高める方法をまとめ、講演を締めくくられました。

■第5回講座  平成26年11月7日(金) 遊学館

「瀧川鯉昇の落語で学ぶ振り込め詐欺撃退法」
落語家 瀧川 鯉昇氏

 前半は、『催眠商法』『未公開株の勧誘』『次々販売』『点検商法』の四つの悪徳商法の手口と、その撃退法をDVDの落語から学びました。後半は、『味噌蔵』の落語で心の底から笑い、身も心もスッキリとした素晴らしいひとときとなりました。