仙人講座/第7期 (平成9年度)

仙人大学校の仙人講座が本格スタート
「第7期仙人講座」七期生120人がいきいき学習

■公開総合講座  平成9年6月18日 遊学館ホール
◆講師/森ミドリさん(音楽家)
◆講演要旨/演題 「花いっときのお話」

自分自身にもっと興味をもとう
 今年五十歳の五十路(いそじ)を迎え、新たな意欲、エネルギーに心がわいています。世の中、一人一人が考え方や感じ方が違うので、それぞれがそれぞれに心地よい生き方が出来ればよいと考えますが、物事に柔軟性を持つことも大事ですし、何事もまず始めてみよう、という気持ちと、自分自身に興味を持つことで新しい発見ができるものです。生涯学習の「生涯」とは「いきがい」なのかもしれません。

 尊敬する作家の宇野千代さんは、常に自分を確認したいとの表れでしょうか、自宅のいたるところに鏡があり、身なりだけでなく心も会話もおしゃれです。九十五歳の時、色紙に「なんだか私死なないような気がするんですよ。はははは は」と書いていますが、私もこうありたいものです。
 もうすぐ一人、今年百二歳の画家の小倉遊亀(おぐらゆき)さんの絵に「一あれば百あり、一なければ百なし」の言葉を添えたのがありますが、初めの一歩の大切さを教えている言葉だと思います。

「か・き・く・け・こ」の精神を磨こう
 人の心をかきたてるものの源には「か・き・く・け・こ」があると思います。「か」は感動、「き」は、あら?なんだったかしら…。「く」は苦にしないで行動、「け」は健康、「こ」は好奇心です。私は四十歳から登山を始め、陶芸や俳句も好きで、花と会話している時間がたまらなく好きです。皆さんも「私はダメ」と否定せず、夢を持ち、心地よい緊張感を持ってキラキラした目を輝かせてください。あっ、思い出しました。さっきの「き」は緊張のきでした。思い出せてよかったわ(笑い)。

(写真:ピアノ演奏と語りで聴衆を魅了した森ミドリさん)
(写真:会場の様子)

第1回「交遊仙人」  平成9年7月15日(火)「遊学館」

 第1回講座のテーマは「交遊を広げる仙術を身につける」で、(財)集団力学研究所副所長の三角恵美子さんが実践講座と併せて「人間関係を楽しく」との演題で講演しました。
 三角さんは「集団力学とは人間関係のことです。人と人とは、いるだけで相手に影響を与えたり、受けたりすることから集団力学といいます。では、人間とはいかなる生きものなのか。お釈迦さまの『人間は四苦八苦の中で生きている』というのが今も昔も変わらない共通点を見出す教えだと考えます。『四苦』とは生まれて、病んで、老いて、死んでいくことで、プラスの四苦は▽人間は自分中心にしか考えられない▽人間は物欲から逃れることはできない▽人間は愛する人と別れなければならない▽人間は憎しみあう人とめぐりあう-で『八苦』となります。近頃、欲求の変化で人間関係が難しい時代になったが、人間関係に絶対正解はないので、いろんな考え方を許容する時代、話せば分かる時代にしなければいけません」と強調しました。

 さらに、実践講座ではポンゾの錯覚図形などを使いながら「物事は視点を変えてみると違って見えるように、人から情報を集めるときは、自分の考えで説得するのではなく、ほかの考えや見方があるのだという考えを持つことが必要です。人間は一人では生きていけません。激突して生きていくのではなく、視野を広げて皆が許容しあえる人間関係をつくることで孤立に陥らない生き方が出来るのではないでしょうか」と問いかけていました。

(写真:話せば分かる時代にしなければ…と語る三角恵美子さん)
(写真:講座のあい間のリラックス体操)

第2回「自足仙人」  平成9年8月21日(木) 遊学館

 第2回の講座は「自主自立の仙術を身につける」をテーマに、獣医の竹田津実(たけたつ・みのる)さん=北海道在住=が「動物に学ぶ自立の仕方」と題して基調講演を行い、実践講座ではJAさがえ西村山観光農業課長の工藤順一さんが「発想の転換と心のおしゃれ」を主題に講演しました。

基調講演

 竹田津さんは、特に野生動物の治療や調査の豊富な経験とデータをもとに「キツネと犬を一緒に飼育したが、犬は同じ事を延々と繰り返すが、キツネはできない。犬は家畜にはなれるが、キツネは家畜になれないことが分かった。人間も同じ事を求め、考えることが大事にされている。教育も同じで、犬をつくる方向に動いているのではないか。人間は犬ではない。複雑な思考を持って、変化する新しいものにチャレンジするのが人間である。是非、犬にならないで人間を目指してほしい。人生五十年から八十年になり、三十年延びました。もうけもんですから、もうけたことをしないと損です」と説いていました。

(写真:犬にならず人間になろうと話す竹田津さん)

実践講座

 工藤さんは、さまざまな観光農業のアイディアを全国に売り込み、平成八年度の山形新聞3P賞「平和賞」を受けました。講演では「アイディアを生む発想の転換は簡単です。皆は『あんな事を考えたらバカだと言われる』と教養がじゃまをして出来ないだけです。私の発想の源は農業です。草むしりも春と秋の七草摘み、とすれば人が来る。要はネーミングです。観光は見て、触れて、眺めて…すべてが本物志向です。さらに安全と安心、遊び心、自然・季節感が加味されます。観光農業では、土づくりが実づくりとなり、魅力を増して人が来ます。感動を呼ぶドラマが必要です。物語がないとだめです。それと見た目で人を判断してはダメです。常に対等で、言葉でなく血の通った心のおしゃれをして人と接することが大切です」と語っていました。

(写真:感動ある物語づくりを語ってくれた工藤さん)

第3回「自足仙人」  平成9年9月11日(木) 遊学館

 第3回講座は「好奇に目を向ける仙術を身につける」をテーマに開かれ、女優でアニメのドラえもんの声優で知られる大山のぶ代さんが「おもしろい人生あれこれ」と題して基調講演を行いました。実践講座では山形市出身のフリーライター・佐藤友紀さんが「好奇心を持ち続けるのも才能のうち」のタイトルで講演しました。

基調講演

 大山さんは「同じ年の夫婦ですが子供はいません。そこで年をとってから他人に迷惑をかけないように生きるため、いろいろ実行しています。まず健康面。毎年、一泊の検査を受けます。主人の四十二歳の厄年後は主人の提案で、おしゃれをして『かわいいよ』と言われるお年寄りになること。身も心も長生きすること。あれ、それ、これとかの代名詞を絶対言わない、などを決めました。四十代半ばからはワープロを始めましたが、夫もパソコンをやっています。五十歳の時には主人に料理を教えました。去年六十になったが六十歳のことを華甲(かこう)と言います。華には十が六つ入っていて、華のような甲羅を経た人という意味があるそうです。私は文字通り華の六十代です」と、絶えず好奇の目を持つことを強調していました。

(写真:かわいいお年寄りに-と話す大山さん)

実践講座

 佐藤さんは「ベネチュア国際映画祭で金獅子賞を獲得した北野武監督(ビートたけしさん)の取材を通し、好奇心は持つほどに、その人のとば口が広がることを教わりました。好奇心の善玉は人生を豊かにするだけでなく、他人まで豊かにしたり、使命感につながっていくケースもあります。吉永小百合さんはTVドラマで胎内被爆の女性を演じてから毎年、原爆犠牲者の詩を朗読しています。黒柳徹子さんも同じだと思います。板東玉三郎さんは暇があると映画やオペラに出掛けます。自分の芸に役に立つ立たないかは別に、まずやってみる、という人の強さを感じます。伊丹十三監督もその一人で、好奇心のある方やいろんな事に興味を持つ人はインタビューの間にも話しをどんどん掘り下げてきます。当然、内容が深まり人間としての懐の深さが反映されます。一線級の人になればなるほどその傾向が強い」と話していました。

(写真:好奇心の持続も才能と語る佐藤さん)

第4回「自足仙人」  平成9年10月14日(火) 山形美術館

 第4回講座は「一芸に抜ける仙術を身につける」を主題に山形美術館で開かれました。数学者であり大道芸人としても活躍しているハンガリー生まれのピーター・フランクルさんが「人生を楽しくする方程式」と題して基調講演を行い、引き続き山形市在住で気功指導員の鈴木秀一さんが「心の美学」のテーマで講演しました。

基調講演

 フランクルさんは「父は総合病院の院長でしたが、施す人でしたので家は貧乏でした。両親から『あなたの財産は頭と心だけ』と教えられました。初来日の時『一怒一老一笑一若』の言葉を目にしました。人間は怒ることで年をとり、笑うことで若返る-との人生観です。平均年齢が六十一歳の母国で父が八十五歳まで生きたのはこの教えを実践したからだと思います。人間として大事なのはモノのために生きるのではなく、自分のライフスタイルに合った生き方をすることだと思います。楽しい人生の方程式は夢を持つことです。人はいずれ死を迎えますが生きている課程に意味があり、夢を持てることに意味があるのです。それを実現するには勇気と友人も必要です。
さらに長寿の秘訣は同じリズムで生活することで、身体に余計な刺激や負担を与えないことです。人生夢を持って、自由な時間をのびのび楽しく過ごしましょう」と話していました。

(写真:パフォーマンスと語りで盛り上げるフランクルさん)

実践講座

 鈴木さんは、「中国では仙人は実話としてとらえられ、仙人になる道を仙道と言い、気功は仙道に乗るための方法論です。人は生まれた時百だった元気も四十歳でゼロになる。これを先天の気といいます。これに対して後から補う気が後天の気といい、気を採ることを採気といいます。食事を取ることなどがそれで、後天の気がきちんと補充されてこそ、人は長く生きていくことが出来るのです。しかし、食の採気にも欠点があります。地面は植物に必要だが逆に上限を決めてしまいます。寿命も同じです。そこで天の気を直接取り込むのがよい。それを研究したのが気功です。人の身体は脳と心筋細胞を除けば五年間で入れ替わり新しくなります。身体にブレーキをかける、ねたみ、ひがみ、うらみの『三み』排除し、自分の潜在意識にプラス思考を働かせる生活を勧めます」と語りました。

(写真:プラス思考で心の美学を、と説く鈴木さん)

第5回「自足仙人」  平成9年11月19日(水) 遊学館

 第5回講座は「発想の仙術を身につける」のテーマで開かれました。自費出版センターを主催する福山琢磨さんが「自分史づくりのすすめ」と題して基調講演をした後、医学博士で東京商船大学講師の佐野裕司さんが「幸せな健康づくり」の演題で実践講座を行いました。

基調講演

 福山さんは「昭和五十八年にある人から子孫に語り継ぐ自分史を依頼されてからこの道に入ったが、自分史の原点は、自分の人生を一冊のノートに書き留めておく庶民史と考えた方がいい。『記憶一代、記録末代』の言葉もあります。記憶は風化現象が起きるが、文章は永遠に残ります。本として出版しなくても大学ノートに書いておくだけでも財産となります。これが自分史の原点ですし、自分史を後世に残すことは先人の勤めです。また、人生の転機となった出来事や人との出会いを重点に盛り込んで構成してしくことも大事です。自分史に何人の名前を書き込めるかもポイントで、人を書きながら自分を書く-これが自分史を作ることではないでしょうか。大いに挑戦してみてください」と語りました。

(写真:自分史づくりのすすめを語る福山さん)

実践講座

 佐野さんは、「病気には、親からもらうものと、感染症など人からもらうもの、そして自分で作る病気と三つの形があります。日本人の死因トップはがんです。性差にもよるが運動の活動量にも関係すると考えられています。米国のスポーツ医学のガイドブックには、運動して予防できるがんとして肺がん、大腸がん、乳がんなど。予防できないものとして直腸がん、膵臓(すいぞう)がんなどを挙げています。高血圧は運動療法が効果的で運動をすれば下がります。運動量はウォーキングなら四十分、一日一万歩。ジョギングなら二、三十分が目安です。身体の痛みも運動していないから起きるので筋肉を伸ばして柔らかくすることも大事です。特に背中の反りと伸ばすことを食前に五十回位することを勧めます。『毎日牛乳飲む人よりは、それを配達する人の方が健康である』-西洋のことわざをかみしめたい」と運動の効能を説いていました。

(写真:運動はがんや高血圧予防に効果があると語る佐野さん)

第6回「自足仙人」  平成9年12月17日(水) 遊学館

 第6回講座は「健康の仙術を身につける」をテーマに開かれました。フードドクターの東畑朝子さんが「生涯青春時代~食生活を考える」と題して基調講演したあと、充実講座で富士通(株)山形支店と同東北システムエンジニアリングのスタッフによる「始めてのパソコン・インターネット体験」を学習しました。東畑さんは「世界一の長寿になった日本人の健康を支えてきたのは、間違いなく日本の家庭料理です。日本の家庭料理は実力があります。世の中が忙しくなり、家族そろって食事をする機会が減る傾向にあり、偏った食事の多い時代ですが、一家団らんの食事は忘れてほしくありません」と話していました。
 実践講座では、パソコンとは、パーソナル(個人)コンピュータ(電算機)の略語である、など基本的な用語や世界の9千万人に利用されているインターネットの実態など、使い方次第では生活に楽しく、有効なインターネットの最新情報を学びました。

(写真:家庭料理を見直そうと話す東畑さん)

第7回「洒落仙人」&修了式
平成10年1月17日(水) 遊学館

7つの仙術で人生の潤いと豊かさを倍増! 7期生114人が仙人の仲間入り

最終講座

 最終となる第7回講座は平成10年1月21日、山形グランドホテルで開かれました。講師はNHKや民放でアナウンサーとして活躍された酒井広さんで、「いい女、いい男は話上手」と題して講演しました。
酒井さんは「日本人は民族的に話し下手ですが、近年は単語で会話が済む状況が見られます。中学生くらいになると『めし』『食う』『寝る』の三つの言葉で終わるような、会話の文章構造が出来ていないケースが目立ちます。国語審議会でも文章構成をしっかり教育するように、との付帯決議が出る始末です。言葉は、たくさんの表現を持つことで自分の考えを豊かに伝えることができます。そういう言葉を知らないから『食う』『寝る』だけなのです。日本語は文章構成があるということを知ってほしいし、学校でももっともっと教育してほしいものです」と強調していました。

(写真:会話の文章構成を大切にと語る酒井さん)

修了式・交流会

 終了式では仙人大学校学長でもある國井理事長が「修了生の皆さんは体得された”7つの顔”を駆使し、充実したシニアライフを送ってほしい」と激励を込めて挨拶し、修了生代表の斉藤喜一郎さん(77歳 山形市陣場新田)と、庄司美智子さん(81歳 山形市泉町)に仙人ライセンスの証書を手渡しました。これにこたえて二人が「有意義な講座でした。今後も健康第一に克己心を高めていきたい」と謝辞を述べました。
鈴木一夫県健康福祉部次長の祝辞などに続いて交流パーティーに移り、落合正吾県老人クラブ連合会長の音頭で乾杯。会食しながら和やかに講座の成果などを語り合い交流の輪を広げていました。

(写真:國井理事長(左)から修了証書を受ける修了生代表)